脇役の設定がしっかりしている点は、本作の大きな特徴のひとつである。
たとえば魔美の担任教師。魔美のセリフで
「ドロンモドキ」
と愛称だけがまず登場する。これを聞いた魔美の父親は
「きみの学校はお化け屋敷か?」
と反応する。この教師は、話の後半で顔を見せるのだが、実はなかなかのハンサム。本名は水谷先生という。当時『熱中時代』などで人気があった俳優の水谷豊を連想させるネーミングだ。してみると、「ドロンモドキ」とは、どうやら「俳優アラン・ドロンに似ている」という意味らしい。
作者の藤子・F・不二雄は、それまでの作品で、いきあたりばったりに脇役を出しては使い捨てる傾向があった。しかし、この時期から、周辺の設定を整備することに注意を払うようになる。たとえば『ドラえもん』でも、のび太の友人関係をあらためて設定し直し、ジャイアンやスネ夫以外の友達も「いつもの顔ぶれ」が定着するのだ。
本作では、連載当初から、こうした細かな設定が考えられていたようである。中学生を対象読者として想定する作品だけに、リアリティのレベルを上げる努力が払われたのだろう。「ドロンモドキ」以外にも、幸子や竹長くんなどの級友たちや、ご近所に住む人たちが、準レギュラーとして何度も顔を出す。
おそらくは掲載誌「マンガくん」との関係もあるだろう。この雑誌は月2回の発行だった。週刊誌ほどスケジュールが厳しくはなく、月刊誌ほど離れてもいない。つまり「前に書いた話をおぼえていられる」し、読者側にも同じことを期待できる環境だったのだ。
おとなりに住む陰木さんや、ハザマ・ローンの女社長など、何人かの印象的な脇役たちの再登場は、この作品をより印象深いものにしている。幸福な連載であったと思う。