絲山秋子の小説の主人公は<アレ〜、こんな人生でこの人これからどうなっちゃうんだろ〜>と絶えず思わせる人ばかりだ。
今回は極めつけでセクトに深入りして20年間地下活動をしていた40代ホモが組織を抜けて京都旅行をする話である。
ああ、どうなっちゃうんだろ〜!
こういう人には近づきたくないが、話は聴きたい。
イトヤマの小説が、現代純文学ハードードカバー、しかも薄っ!でも売れるのはどうやらここいらの<聴きたいけど近づきたくない人の話>を巧い筆致で描くからであろう。
すると実に現代的な話に聴こえるが、マルキシズムとキリスト教が主題であり、それに裏切りと偽物という逆説的な切り込みがあり、なおかつ主人公の目的が失踪した双子の兄を捜すことなので、案外古典のような物語が展開する。
それを古臭く感じないのは語り口がラノベ以上になめらかだからだろう。
そういう古典への視座も併録「アブセント」でブチ壊しにするから実にぬかりの無い作家である。