メソポタミアは千年近い都市国家同士の争いの果てに統一国家ができたのに、エジプトでは突然統一王朝が出現したように思えておりました。統一前の状況は一体どうなっていたのであろうか。
本書は丁度そんな疑問に答えてくれる書籍でした。紀元前4000年紀とその前後のエジプトを扱っています。エジプト文明誕生の学説史からはじまり、前7千年紀、6千年紀、5千年紀の概要をさらって、4000年紀が詳述されます。マーディ・ブト、ナカダ、ヌビアAグループなど各ローカル文化が扱われ、集落や都市化の状況、埋葬の進展に見る階層分化状況、職業文化の状況、メソピタミアやヌビア、パレスチナとの交流による社会の高度化、複雑化などの果てに、ナカダ文化がナイル上下流域を覆うようになり、ローカルな政治的統合から初期国家への発展に至る過程が丁寧に紹介されて、初期王朝の誕生を持って終了しています(統一前後の時期については、大城道則氏
ピラミッド以前の古代エジプト文明にうまく接続できます)。
多くの読者は、古王国時代の大ピラミッドや新王国時代の墓壁画や墓葬品に興味が惹かれるので、地味な時代を扱った本書はあまり人気を得られないかも知れません。でも、わざわざ都立図書館にまで行かないと読めないなんてあんまりです!(区立図書館経由での貸し出しもOKとのことですが、購入前にさっさと内容を知りたいじゃないですか)
それにしても、統一も、巨大遺跡もメソポタミアより早いので、エジプトの方が進んでいたのかと思っていたのですが、なんだか古墳時代の日本に似ているように思えてきました。文字が無い時代に長期の都市国家の争い無しに大古墳を作る統一国を作った点で。
古代エジプト史には詳しくないので、「他に本があるよ」と言われるかも知れませんが、少し図書館で確認した限りでは、統一前のエジプトを扱った書籍としては、本書が白眉に思えました。せっかくの良書、宣伝したいと思います。