本書は題名が『エコロジカル・ダイエット』となっており、一見ダイエット本のように思われますが、原題の直訳は、
『新しいアメリカのための食事:食の選択があなたの健康、幸福そして地球の未来の生命にどのような影響を与えるか』
(Diet for a New America: How Your Food Choices Affect Your Health, Happiness and the Future of Life on Earth)
です。
内容は確かに邦題のように‘エコロジカル’(地球環境にやさしい)・‘ダイエット’(食事)も含まれますが、日本語で「ダイエット」というと痩せることを連想させるのでこの題名はあまり良くないと感じます。
本書の大まかな内容としては、肉や卵、乳製品を取ることがいかに健康や環境に良くないか、我々がいかに肉などの摂取が体にいいと思い込まされてきたかがとてもわかりやすく説明されています。
面白い事に、著者は31アイスクリーム創業者の御曹司なのです。彼は会社を継ぐことを期待されながらそれを拒否し、逆に本書の内容のように肉や乳製品をとることに対する健康や環境への害を主張していきます。
実際創業者の一人である著者の叔父は毎日アイスクリームを食べていたこともあって早いうちにガンで亡くなったそうです。
本書の前半は動物たちが感情をもった利口な生き物であることが書かれており、本論は後半部から始まります。後半は肉食や乳製品、卵の摂取が健康にどけだけ良くないか、環境にどれほどの負荷をかけることであるかが説明されています。
具体的に説明すると、家畜はまず狭いところにギュウギュウ詰めにされて飼育されているので、当然体に不調をきたしやすく大量の抗生物質が投与され、また成長促進のためにホルモン剤などが注射される。
肉などを食べると、それらの化学物質を人間が体内に取り込むことになるとともに、また動物が不快な環境で育ったことと殺されるときに発するネガティヴな影響(ホルモンなど)も同時に摂取してしまう。肉を取ることが人の攻撃性をあおるということが言われ、実際よく戦争をしている地域を見ると肉食が多いように思いますが、ジョン・ロビンスの説明を見ると確かにそうなるだろうなと納得できます。
また肉食の量とガンの発生率の統計や、逆に第二次世界大戦中に北欧では肉が食べられなかったことで国民が健康になった事例などが報告されており、こういった様々な医学的、社会的な統計からも肉食の害が説明されています。
また環境に対しては、現在、肉1kgを作るのに穀物11kgが必要とされるといわれますが、おおよそ一食分の肉で10人分の食をまかなえるそうです。これは地球全体が肉食をやめた場合、世界中で飢える人がなくなる分量だそうです。また家畜を育てるための大量の穀物を育てる必要がなくなるので、化学肥料や農薬を使って土壌を酷使する必要もなくなるので肉食をやめることは環境にもよいという訳です。
本書を読むと私たちが小さい頃から「肉を食べると元気になる」、「牛乳を飲むと骨が強くなる、背が伸びる」などの謳い文句を知らず知らずのうちにすり込まれてきたことが分かります。
戦後脱脂粉乳というものを日本国民は飲まされていたわけですが、あれなどは牛乳からクリームやバターの成分を抽出した後のカスで本来家畜にやるものだったそうです。あそこまではいかないにしても、日本がいままでにアメリカの余剰穀物のはけ口としての役目を果たすために食事を肉食化の方向に誘導されてきたのです。
実際なぜ牛乳の消費量の一番多いアメリカで骨粗鬆症が多いのか、肉を大量に食べているアメリカ人の寿命が先進国の中で低く、異常にガンの罹患率が高いことを本書内でみせられると、私たちが商業ベースの情報をすり込まれてきたことがよく分かります。
そういった意味でこれは啓蒙書であり、実際私はこの本を読んで菜食に転向しました。たまに魚は食べますが、健康にはまったく支障はありません。というよりむしろ体も心も軽く爽快になりました。だいたい肉を毎日のようにたべるようになったのはここ7、80年ほどで、昔の日本人は穀物と野菜と魚が中心でした。その何千年かの間に培われてきた体にあった食べ物に戻ったので、体も楽になったということなのかもしれません。
また本書で述べられているように、一流のアスリートで敢えてタンパク質を植物からとる選手もいるそうなので、パワーをつけるなら肉という考えはスポーツをやるひとたちにとっても再考すべきテーマであるように思います。
著者の邦訳に『100歳まで元気に生きる! 』もありますが、どちらかというと『エコロジカル・ダイエット』の方が内容的に面白く、文章に勢いがあり、ためになります。興味のある方は是非ご一読ください。