作者の人生を語るノンフィクションものだが、
これが文句なしに面白かった。
文章力に努力の後が見られるところも好感がもてるのだが、
何と言っても本書の魅力はその素材の良さだろう。
本や映画などにおいて、稀に「幸福な結実」というのが存在する。
映画で言えば、例えばフェリーニと映画という様式それ自体だったり、
ジョージ・ルーカスとSFだったり。
小説で言えば、いわゆる「時代と寝た小説」のシリーズ。
「ライ麦畑でつかまえて」や「時計仕掛けのオレンジ」などは
その類に当たると私は考えている。
そんな稀な結実が、この本の中にある。
素材の良さと、それを語るに相応しい語り口。
眠れない夜、午前二時に読み出して、
読み終えたときには陽が昇っていた。
読後感は実にすっきりしていた。
夜と夜明けによく似合う。
是非一読して欲しい。