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エクリチュールの零(ゼロ)度 (ちくま学芸文庫)
 
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エクリチュールの零(ゼロ)度 (ちくま学芸文庫) [文庫]

ロラン バルト , Roland Barthes , 森本 和夫 , 林 好雄
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「文学的形式(フォルム)を“アンガジェさせる”こと」と「サルトル的アンガージュマンをマルクス主義化すること」という二重の企図のもとに書かれた『エクリチュールの零(ゼロ)度』は、サルトルの『文学とは何か』によるブルジョワ的“文学”神話の“脱神話化”の試みを引き継ぐとともに、その人間主義的限界の乗り超えを目指した。言語体(ラング)とも文体(ステイル)とも異なる文学の第三の形式的現実としての『エクリチュール』は、はたして“文学”を解明したのか。つねに現代思想の先頭を走り続けつつ、変貌を重ねたバルトのエクリチュールの冒険のすべては、ここから始まった。

登録情報

  • 文庫: 276ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (1999/10)
  • ISBN-10: 4480085238
  • ISBN-13: 978-4480085238
  • 発売日: 1999/10
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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By dvrm トップ100レビュアー
形式:単行本
 二年ほど前、言語学の教授の未亡人からソシュールの「一般言語学講義」やヤーコブソンの選集、サピアやウォーフの著作とフーコーの「言葉と物」、レヴィ=ストロースの「野生の思考」、メルロ=ポンティ「知覚の現象学」などと一緒に本書を戴いた。しばらく拾い読みしたが、メモを取りながら読んでいくと、この著作が一種の地図として構成されていることが見えてきた。

 本書には「零度のエクリチュール」「記号学の原理」とそれぞれ訳された論文が収録されている。使われている語り口はまったく異なるが、エクリチュールなるものの特質や種別や分布を明らかにする手法と、記号なるものの特質とその構成要素と相互作用についての分析手法は、気取ったいい方をすればトポロジー的に相同性を持っている。

 「零度のエクリチュール」では一貫してフランスにおける推移を取り上げていることに注意する必要があるが、大部分日本での分析にも有効性を持つ図式として使用できるのではないか。まず、著者は一つの言語使用者にその言語の使用可能領域を限界づけるラングと、言語使用者自身の過去が使用者を束縛する結果としての文体を挙げ、それら決定的な規定を齎す機能より自由度のある、制限的自由を持った機能としてのエクリチュールをまず定義する。エクリチュールは自然的限界ではなく、言葉を使う者が巻きこまれている制度や慣習に条件付けられているといい、以下ではエクリチュールの様々な表れ方を一つ一つ取り上げ、解説を付していく。いわく、政治的エクリチュール、小説のエクリチュール、詩的エクリチュール、小説的エクリチュールのサブカテゴリーとしての古典主義的エクリチュール、古典主義的なエクリチュールの安定性が失われた後の種々のエクリチュール、以下それぞれ、フローベールを代表とする職人的エクリチュール、モーパッサン、ドーデ、ゾラたちの自然主義的エクリチュール、マラルメの破壊的エクリチュール、プルーストのエクリチュール、カミュ、クノーらが獲得した零度のエクリチュールなどが列挙されている。ここで大事なのは新しいエクリチュールが現れても古いそれが消滅するわけではなく、領域を別にして領土を広げたり狭めたり、あるいは重畳していたりと、実際にはサラダボウルの中の野菜のように共存していることだ。そんな描き方にキャプションが添えられ、結果としてエクリチュールの分布図が読む者に与えられることになる。その過程で、エクリチュールについての理解も深まる仕掛けになっている。

 一方の「記号学の原理」は、ソシュールが「講義」で言及しながらも自身は組み立てることのなかった記号学の枠組を、バルトが、ソシュール及び以後のヤーコブソン、イェルムスレウなどの知見を交えながらとりあえずの作業仮説として作り上げた論文だ。「ラングとパロール」「シニフィエとシニフィアン」「シンタグムとシステム」「デノテーションとコノテーション」といった章立てで、各章ではまず言語学の成果を纏め、その後に記号学にそれをどんな風に応用できるかを考えている。記号学の対象となる具体的例としてはモード、食品、自動車、家具が取り上げられている。ある意味では以後のバルトの実践のための要綱といった性格があり、それでもかなり抽象的かつ論理的に書かれているので、メモを取りながら読むと理解しやすいと思う。

 読み終えてみると、ここでの二つの論考は以後のバルトの文筆活動を規定するもので、そんな意味で他のバルトの著作と併せて読むとより理解しやすいし、興味深い一冊になるだろう。
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