「エクイティファイナンスの実務」といえば大和証券が90年代(だっただろうか)に出版した類書が有名だが、本書では良くも悪くも弁護士先生たちがエクイティファイナンスをどのように勉強しているかがはっきりわかる。全体的に言えば良書。まったくの初心者がエクイティ取引の日本国内での法規制を知るためにはこの本によって最短距離を走れると思う。
ただし、あくまでも弁護士の視点なので、法規制やスケジューリングがどうなっているかを熟知しても、それは例えば、あくまでもスキーム検討の際に無数の選択肢を消去法で消していく際の武器などとして使うことが多いと思う。つまり、この法規制をどうやって使っていくら儲けられるかと言った直接の相場勘や、財務諸表上の数値の未来予測など(簡単なデリバティブでの将来の数値の試算)は本書を頼っては得るものがわりと少ない。あと、脚注や参考文献を見れば、弁護士がどのような書籍から実務の知識を補充しようとしたのか痕跡が透けて見える。その本よりもいい本があるが…とか、その計算よりもいい手法があるんじゃないかな…とか、生計を立てている者からすれば、いろんなことを言いたくなるのは否定できない。もちろん著者陣がこの内容を書いてるのは裁判所の無数の判例だとか業界団体の標準指針とかが念頭にあるからであって、それらを破綻しないようにうまく組み合わせたら彼ら弁護士さんたちの脳内の世界観はこうなったよ、ということでしかないわけだが。
ただし、ヒマのある社会人3-5年目くらい(こんなに若いと扱う仕事はものすごく限られているので、へたしたら当事者になるころには法改正だらけで使い物にならない危険も高いが)の若手がひたすら読み続けていけばかなりの応用力がつく参考書であることは間違いない。こういう規則集がお好きな方(けっこういるんだよなこう言う人たち…w)、もしくは将来的に必要性のおありな読者には有益な本だと思う。