少なくとも特撮ファンを自認する人は、買う必要のない本だと思う。
かくいう私も特撮ファンであるが、ウルトラマンは、あくまで特撮のひとつにすぎず、ウルトラシリーズファンというわけではない。この本は、そんなライトな「一特撮ファン」の私ですら知っている事しか書いていない。
そして肝心の内容なのだが、きわめて浅薄と言わざるを得ない。結局、世相とその時代のウルトラシリーズをリンクさせようとしているのだが「この頃、世の中ではこういう事がありました。それにヒントを得て、こういうシリーズやストーリーがありました」という表層的な関連性を指摘している場合がほとんどだ。
こちらとしては、その意味するところの評論が欲しいのに、これでは「そんなもん、当時の世相のまとめ記事と、ウルトラシリーズ各話の荒筋があれば、誰でもわかるわ」と言いたくなってしまう。
また殆ど全ての場合において、肯定的な意見となっている点も問題だ。ハッキリいえば「ウルトラシリーズ礼賛」の上に成り立っている解説ばかりである。
特撮関係一般の見方として示されている各ウルトラシリーズの問題点も、ほとんど全てで良い方向へ持っていってしまっている。
そこに今までの見方とは違う論点があって、その上で反論しているのならばまだ良い。しかし失礼ながら、ほとんどが「提灯」レベルの言い分であり、とても納得できるものではない。
また私が感じる最大の難点は、全てのシリーズ解説において内容が極めて中途半端と言わざるを得ない部分だ。バックボーンの解説が終わり、さぁ核心へ、と思ったところで、次のシリーズの解説に移ってしまっている。
これがストーリーが暴露するのを防ぐ為にというのであれば、まだわからぬではない。しかし殆ど全てのシリーズ解説において、最後はどうなったかの描写がされている。結果として、こちらとしては「えっ? これで終わり?」という感覚に襲われてしまうのだ。
私としては、資料的価値なし、評論的価値なし、の一冊と言わざるを得ない。
この本が役に立つのは、
○ 特撮ファンではないが、子供の頃、ウルトラシリーズを普通に見ていた。最近、子供と一緒にウルトラシリーズを見るようになり、当時の世相との関連を、懐かしさとともに振り返りたい、という三十代、四十代の男性。
○ 特撮ファンではあるが、平成以降のウルトラマンしか見ておらず、昭和のウルトラマンの、製作のバックグラウンドを端的に知りたいと思っている中高生。
○ 旦那と子供がウルトラシリーズに夢中になっているのだけれど、自分は今ひとつ良くわからないという奥さんが、大人の視点でウルトラマンをざっと理解したい時。
くらいのものかなぁ。
※ちなみに掲載されているのは、日本におけるテレビシリーズが基本であり、オリジナルビデオや映画、海外のウルトラマンに関しては皆無に近いのでお気をつけ下さい。
この書籍は「なか見!検索」が可能であり、目次は全部見ることが出来るので、よく確認する事をおすすめします。