本書は、昭和17年に出版されたものであるため、文章の格調は高いのですが、文語と旧字体の漢字が注釈なしに書かれていますので、内容の完全な理解には国語辞典その他を座右にする必要があります。内容はまずヴェーダやウパニシャッドの文献的考察からはじまり、本論として梵我一如などのウパニシャッドの主題が書かれています。ウパニシャッドの一般の人のための入門書としては難解で不適。むしろ、日本におけるウパニシャッド研究史として、昭和17年当時どのように著者が研究に従事していたのかを知るという意味で、専門家には有用と思われます。その点、文章中には文献が引用されているのも本書の学術的価値を高めています。後半80ページほどには著者の訳になるウパニシャッドの抜粋がありますが、完全に文語であり、一切注はなく、書かれている内容の理解は困難で、日本語訳でありながら、この部分の現代語訳が欲しいと感じる人が多いのではと思われます。ただ、ウパニシャッドの原典に何が書かれてあったのか、概ね感じることはできます。以下の引用などは覚えておきたいところ。“危ういかな、無知に蔽われ自ら賢明にして学識ありと妄想する者は。かかる愚人は盲者に導かれる盲者に異ならない(p101)。” “東流西行の諸川の海に注いで大洋をなす時、われはこれなり、われはこれなりの区別はない(p108)”