長らく読まうと思ひ乍ら果せなかった本書を漸く読み終へる事が出来た。思へば著者中井和夫氏の講義を大学で聴講したのが、ウクライナ史との出会ひであり、二十数年の年月が経ったわけである。
先づ、本書はウクライナ史の現在を総括したやうな独立とそれを生かしめたナショナリズムについて分析、解明の書である。そして、著者中井和夫氏の相変らずの緻密な論証姿勢は衰へを知らぬ知性を感ぜせしめるものがある。主観的な思ひと客観的な論証の二つが合はさって、ダイナミックなよき作品として結実されてゐる。
本書で、新しく明らかにされてゐるのは、ウクライナ国家成立に際して、民族派と大統領の行動が「独立国家」維持といふ観点でバイアスがかかったといふ興味深い事実の解明である。そして、ウクライナ国家の順調な生成発展には、「ユニエイト」的なものに可能性を見出してゐる事である。
更に言へば、著者に本書刊行後の十数年のウクライナの現在とその推移をウォッチされての新たな識見を示して貰ひたい所である。