テロリストによる生物兵器によって水が飲めなくなる大都市。その影響で、水を求めてパニックになる人々……。
この設定ならば当然、見る方はテロ組織と政府軍の戦いが映画のメインになるだろうと思うのだが、予想に反してこの映画にはそのような場面はまるでない。描かれるのは、粗暴で気の荒い友人を何かとかばいながら水を求める若者2人と、水を高値で売る食料品店を営むインド人一家と、その店の息子が愛する白人女性の戸惑い、そして家族を気にしながらも街の治安維持のために任務に就く軍人男性の活躍という、異なる3つの立場の人々の姿である。
期待するような大がかりなパニックはまるでなく、むしろ極限状態の中で水を求める者と水を売る(持つ)者、そして水を守る者たちが、やがて交錯していく人間ドラマに中心がおかれている。
明らかに低予算で作られている「パニック映画」だが、「パニック」とは人の心の葛藤のことだということを、正面から見据えた「本格派」のドラマである。「水」のように、当たり前に有る人間関係(家族、恋人、友人…)が、決して当たり前のものではないことを、この映画は極限状態の中で描こうとしているようだ。
見終わった後に、やや消化不良気味の感じを持つことは否めないが、映画を作ろうとする若い人や、ドラマとは何かを考える人には、いい「教材」になると思う。