売上高世界一、従業員数160万人という数字だけでは表せない、社会・経済に与える影響力について、本書では様々な角度から光を当てる試みをしている。
徹底した秘密主義を貫く同社は、取引先にも対外的にウオルマートとの関係を論じることを禁止していることから、その実態は捉え所がないとされて来た中で、著者の取材力・情報収集に賭ける努力は評価に値する。
ウオルマートと取引することは企業にとって良いことか、という問いに対して、その取引規模からアメリカンドリームを実現した起業家の例と、ウオルマートの求める取引条件(度重なる値引き要請)に対応出来なくなった企業と従業員の破滅的な末路の双方を紹介している。
またウオルマートが出店することはその地域の雇用を増やすことになるのか、ということについても、雇用統計や廃業する中小小売店の記録から分析を試みている。
ウオルマートが大量にサケを調達しているチリの養殖場での環境への大きな影響もその取扱数量のなせる業であるが、今日的課題を突きつけている。
Everyday Low Price という同社のコアバリュー(根源的価値観)は同社発展の原動力であり、消費者の生活にも大いに役立っているものの、既に環境問題や劣悪な労働環境など、社会的な調和が取れなくなって来ている部分もありながら、その価値観や経営理念を急には修正出来ないところに、同社の大きな課題が見られる。いずれにしてもウオルマートの社会にもたらす影響については、未だに正確に把握出来ていないが、恐ろしいことに、その影響力の主体である筈のウオルマートですら、それをコントロールし切れなくなって来ているのではないかというのが本書の示唆するところである。
ビジネスとしてのみならず、消費者としての観点から見てもとても興味深い一冊である。