人間が羆に襲われる・・・・よくある話なのですが、本作はとても良く出来たフィクションです。
「本当は☆一つに近い」という厳しいレビューを見た後で読んでみましたが・・・。
この題材でフィクションを書くのは、難しい。
下手をすると「シャトゥーン」の様に成ってしまいがちです。
動物パニック物は怪獣SFやホラーとは違うのですから、現実感が希薄になるとお終いです。
本作は、動物パニックが陥ってしまいがちな失敗を見事に回避しています。
登場人物の関係も、登場する羆が危険な羆になった動機付けも、ちゃんと納得出来ます。
『「羆を操る謎の女」という内容紹介からして、読む気がせん!!』という人も居られるでしょうが、心配御無用。
後は読んでのお楽しみです。
筆にはデビュー作ながら力とスピード感があり、このジャンルが好きな人ならば一気に読んでしまうでしょう。
個人的にはキングの「クジョー」以来、最も楽しめた動物パニック小説でした。
私は動物パニック物というのは、娯楽作品であると思っています。
肩の凝らない、大衆の楽しみとしてある作品です。
なるほど本作を読む事は「邂逅の森」他、熊谷氏の後の作品に触れるような重厚な読書体験ではありませんが、厳しい現実を生きる人達が楽しむための一冊として「愛される小編」たる資格は、十分にあると思います。
北海道方面にお出掛けの方は、本作と「羆嵐」辺りを持って行かれては如何でしょう?