ホントに江クニ香織って天才なんだなって思う。タイトルもさることながら、この書き出し。
「かつて、私は子供で、子供というものがおそらくみんなそうであるように、絶望していた。絶望は永遠の状態として、ただそこにあった。そもそものはじめから。
だから、いまでも私たちは親しい。
やあ。
それはときどきそう言って、旧友を訪ねるみたいに私に会いにくる。やあ、ただいま」
こんな冒頭見せられたらひきつけられないわけがない。
まぁ、絶望に取り付かれた女性の話。自分はもう中年で、言うなれば、恋人の頭の中で生きているような存在。外部から見れば恋人が私に尽くしているように見えるが、妹は、私が恋人に尽くしているんだというきわどい一言を言ったりする。恋人のべったりな関係の中に妹という少しつめたいスパイスを加えることによって、ともすればすぐに甘美な絶望な中に吸い込まれそうな私を現実につき返す。うーん、切ない。
ストーリーはないも同然であるが、ページをめくる手がとまらない。正真正銘の傑作です。