この作品も、他の多くのドイツオペラと同様、近年は抽象的・現代的な演出で上演されることが多くなっています。もちろんそれはそれで結構なのですが、特にこの作品の場合、やはりドイツの深い森の神秘を感じさせてくれるようなオーソドックスな設定も是非味わいたいものです。その点この映画仕立てのディスクでは、旧き良き時代のドイツオペラの醍醐味を素直に感じ取ることができます。ソーンダース/マティスを始めとする、往年の名歌手たちの美声と凛々しい姿を楽しめることはもちろん、衣装や小道具なども実に自然で美しくまとまっています。この作品が、少なくともオペラに関しては後進国とみなされていた当時のドイツにおいて、熱狂的にもてはやされたということが納得できるように思えます。また、例の「狼谷の場面」では、一昔前の特撮怪奇映画でもみているかのような不気味な特撮がふんだんに使われていて、これはこれでまた別の意味での楽しさがあります。ただ、多少不満を感じる点があるとすれば、音声がモノラルであるということと、伴奏を務めるハンブルクフィルハーモニーの演奏が、しばしば良い意味でのドイツ的荒々しさに欠ける感があり(例えば、狩人の合唱の冒頭部など)、ああこれでオーケストラがドレスデンかバイエルンあたりだったらなあ、と思わせてしまう瞬間がままあるということでしょうか。