巷には情報化社会やインターネット、ウェブに関する書物が溢れている。
それらの本の著者はおそらく20代、30代といった若い書き手が多いのではないか。
この著者は彼ら若い書き手が生まれる前から情報学に携わってきた第一人者である。
まさに碩学と言うべき人物であるが、そんな著者から見て現代のウェブ社会はどのようにうつっているのであろうか。
まず手放しのウェブ礼賛はない。
ウェブがすべてを変えるとか、ウェブ以前・ウェブ以後というようなお手軽な論議とは全く無縁である。
私がもっとも強い印象を受けたのはウェブの成功者はベスト・アンド・ブライテストの人々だと言うことだ。ウェブが社会を変える、格差を縮小するなんてとんでもない。既得権益層での権力の再分配に過ぎないという指摘には目から鱗が落ちる思いだ。
このあたりは流石、情報論や情報技術の発展を見つめ続けてきた著者ならではであろう。
目先の派手さに目を奪われることなく、本質を見抜こうとする姿勢は見習わなければならない。
また、情報とは「伝わる」ものか、そもそも情報とは何であるのか、情報そのものへの考察も刺激的であった。普段何気なく情報という言葉を使っているが、その実態は予想以上に広く、深いものである。機械情報をいかに生物情報に近づけていくのか。オートポイエティック・システムなど理論的に込み入った部分もあるが、今後の情報社会の行く末を占う上で、もう一度情報とは何かを考え直すために必要な論議に違いない。
ITからICTへ時代が動きつつある今、機械情報と生物情報の違いを理解し、機械情報を使ってどのように生物情報を記述すべきかを考える時代になってきているのだろう。