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ウェブ社会の思想―“遍在する私”をどう生きるか (NHKブックス)
 
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ウェブ社会の思想―“遍在する私”をどう生きるか (NHKブックス) [単行本]

鈴木 謙介
5つ星のうち 3.4  レビューをすべて見る (12件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「ユビキタス」「ウェブ2・0」「ネットビジネス」…華々しい流行語の陰で何が起きているのか。蓄積された個人情報をもとに、各人の選ぶべき未来が宿命的に提示される。カスタマイズされた情報が氾濫する中で、人は自らの狭い関心に篭もり、他者との連帯も潰えていく。共同性なき未来に、民主主義はどのような形で可能なのか。情報社会の生のゆくえに鋭く迫り、宿命に彩られた時代の希望を探る、著者渾身の一冊。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

鈴木 謙介
1976年、福岡県生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。現在、国際大学GLOCOM研究員。専攻は、理論社会学。2006年より「文化系トークラジオ Life」(TBSラジオ)のパーソナリティーを務めるなど、多方面に活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 265ページ
  • 出版社: 日本放送出版協会 (2007/05)
  • ISBN-10: 4140910844
  • ISBN-13: 978-4140910849
  • 発売日: 2007/05
  • 商品の寸法: 18.4 x 13 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.4  レビューをすべて見る (12件のカスタマーレビュー)
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21 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
あまりに凡庸 2008/2/22
By 玄鵬
形式:単行本
インターネットが普及し、ウェブ上で情報をやり取りすることが当たり前になったこの社会では、人々の生活がどのように変化するかを展望する書。
技術的な側面から観察した実際的な生活の変容を考察するのではなく、
環境の変化に伴って発生する人々の意識の変化を考察しているのが特徴。

著者は、いつでもどこでもウェブの世界に接続可能になるという現在のウェブ社会の潮流を観察することで、バーチャルな「私」が私自身の意志や欲望を先行するかたちで現出するという現象を捉える。
これを以って、ウェブに接続されることで、我々の未来の可能性が閉じられていくことを懸念するのが本書の問題意識である。

この指摘はまさに、「大きな物語」が失墜したポストモダンな社会を我々はいかに生きるべきか、という重要な問いかけを含んでいる。
そうでありながら、最終的にこの問いかけの着地点を、社会性へ回収するところに設置しており、
前期近代以前のあまりに凡庸なモダニズムの視点で締めくくられてしまっている。

ウェブに関する社会学的評論に、とかく当人の個人的期待や反感を反映した論調が多い中で、本書は冷静な筆致であることは評価できる。
冷静ではあるが、予定調和的な価値基準によるその視点は、
価値基準の流動化しているウェブ社会を批評するにはあまりに凡庸すぎる。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By DAGGER
形式:単行本
情報化社会における「宿命」の前景化、を中心に扱った本です。個人情報の蓄積(「情報としてのわたし」)が、わたしを先回りして立ち現れるようになり、未来の選択が宿命のように前もって決められていた事柄として受け取られるという点に注目しています。

ただ、レコメンド・システムで「宿命」を語るのはいかがなものでしょうか。グーグル化で話題の某勝間氏などは、宿命を加速している(!)ことになります。ウェブ社会と宿命を結びつけるのは強引過ぎるとの印象を持ちました。

宿命論については、マンガや小説の作品論の側面が大きく、文学的主題としての宿命論になっているような気がします。

ウェブ社会についての記述は興味深い点が多く、一読の価値は大いにあると思います。しかし、宿命論につながる際の落差が大きく、興味が途切れてしまい読むのに時間がかかりました。
このレビューは参考になりましたか?
6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ふんふん トップ100レビュアー
形式:単行本
 オンラインゲームのなかに構築されているヴァーチャル・リアリティは、いまやひとつの仮想経済圏を成立させるほどの、そして現実の経済圏とも相互応答しはじめるほどの水準に達している。また、データベースに蓄積された個人情報をコンピュータが分析して、自分が次に購入すべき商品をシステムの側で決定(推薦)してくれるというサービスが広がっている。こうして、情報化の進んだ社会のなかで、物理的・実体的な存在としての「わたし」は徐々に背景に退き、データとしての「わたし」が前景化しているのである。

 さらに、「データとしてのわたし」を存在させているデータベースが、あらゆる生活用品にICチップを埋め込んでネットワーク化し、コンピュータで管理するという「ユビキタス」の構想と結びつけば、「わたし」が何も決定しなくても人生と社会が動いていくような時代がやってくるのかも知れない。情報化は「わたし」を客観的事実に変えてしまうのであり、人々は「宿命」を受け入れるかのようにして所与の「現実」にぴったり寄り添って生きていくようになる。

 こうした妙な未来予想が語られるのは、鈴木が、現代のウェブ社会を生きる若者たちの心理がすでに「宿命的決定論」、「端的な事実への志向」に覆われつつあると見ているからだ。「記憶」よりも(携帯電話などを用いた)「記録」に強く依存し、「データベース」に問い合わせて自分の行動指針を求めるような傾向がすでに現れてきているし、若者たちの「マスコミ批判」は「書いてあることが『事実』であったか否か」だけを問題にしているかのようだし、「ぷちナショナリズム」と呼ばれるような現象は「国家は大事だから大事に決まっている」という同語反復的な事実の肯定に過ぎないし、近年のサブカルチャー作品には「自分が閉じこめられてきた環境からの脱出」というモチーフが見られなくなったのだという。

 鈴木は『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書)の中でも、若者たちが「やりたいこと」という内発的な動機を失って、データベース内の自分の行為の履歴を参照して「欲望すべきもの」を見つけ出した上で、お祭り騒ぎ的な熱狂でもってそれを「私の欲するもの」としてムリヤリ肯定し、しばらくするとその欲望の無根拠性に絶望するという、躁/鬱のサイクルを生きているのだと指摘していた。

 「カーニヴァル」的に「宿命」を肯定して生きることは、行為のたびにその意義について悩みながら生きることよりも、ある意味では幸せかも知れない。しかし「大きな物語」が終焉した現代にあって、一人ひとりが抱いている「宿命」はえてして島宇宙的な幻想となりがちだ。現代とは、「『小さな真実』が無数に跋扈する時代」(p.228)なのである。

 こうした社会状況下で、公共的な事柄についての決定がまともなものであるはずがない。決定に参加する人の数が増えれば増えるほど間違いは減っていくと考える「数学的民主主義」や、人々に公共的な意思を強制するようなシステムを設計すればいいと考える「工学的民主主義」といった、新たな民主主義モデルにも期待できそうにない。

 そこで鈴木は、「(オタクですら)他者と関わらざるを得ない」というひとつの「宿命」的状況に気づくこと、そしてネット上の島宇宙の外側の社会には、歴史的な「持続」という、ネット上のにわかコミュニティには持つことのできない重みが宿っているのだということに気づくことによって、公共的な領域へと眼を開いていこうと言う。島宇宙的幻想としての「宿命」が宿命的に受け容れ不可能なのだということを、「他者」や「歴史」の存在を根拠として論理化していくわけである。

 この処方箋には具体性が乏しく、有効なのかどうかは分からない。また、鈴木の分析は現実の傾向を誇張し過ぎているきらいがあって、こうして状況の大変化を声高に述べ立てること自体が「宿命論」を加速するのではないかとも言いたくなる。しかし、ウェブ技術が生活に浸透するとともに「事実」、「現実」、「宿命」(と思われるもの)に人々が惹かれていく傾向が生まれているという指摘そのものは、重要であると私は思う。そしてそういう事態が生じていることを裏付ける事実が豊富に紹介されているのもありがたい。
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