本書では、「ウェブログ」を、ウェブ日記やテキストサイト、ブログ・ツールなどの総称として用いています。その上でネット上のコミュニケーション全体の中にウェブログを位置づけます。WWW以後、成長・発展してきたウェブログの変化もとらえています。こうした大きな視点に立つことで、現在のブログ・ブームの背景や特徴がよりよく理解できると考えています。
本書の特徴はまだあります。ウェブログに関してこれまで行ってきた研究をベースにしている点です。人はなぜウェブログを書くのか、書き続ける動機は何か、というテーマで、わたしたちは1997年にウェブログ(当時はウェブ日記)研究を行いました。さらにその枠組みを発展させて、2004年にも研究を行いました。それぞれの研究から、ウェブログを書き・読む人々の意識をデータに基づいて考察しています。
さらに、インターネットの変遷、特にウェブ日記からブログへの発展の理解を助けるための年表や記事の附録も本書の特徴です。ブログに関する新しい情報は、現在たくさん得られます。しかし一昔前の情報は早くも失われつつあり、今記録しておくことが大事だと考えたからです。
現在ブログ関係の書籍はたくさん出ています。その中で、本書は異色ではないかと思っています。ブログの設置方法も、どうやったらブログでお金儲けができるかも書いてありません。そうした内容は、他書に譲りました。
古くからのネットユーザの方々には、「そうそうこういうことがあったよね」と懐かしがっていただける部分もあります。最近ブログを始めた方、これから始めようかと思っている方々には、附録の「ウェブログの歩き方」が参考になると思います。ウェブログを利用する際の留意点やアドバイスを載せました。
本書の企画から完成に至るまでの間、たくさんの方のお世話になりました。いただいた情報や経験を、十分生かしきれていないところもありますが、まずはこうした形で本を提示することで、今後さらにウェブログについて考察し研究を続けていきたいと考えています。
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ネットの日本での発達の歴史がわかりやすくまとめられていて、
自分が参加する前の事情もわかり面白かった。わずか十数年のことなのに、
状況の変化は隔世の感があるのだ。著者はみなその間の事情に詳しく、
ちょっとした「昔話」を先輩から聞いている気分になった。
この本のなかのいわゆる心理学的な記述に関して、個人ホームページを持って
何年かにわたって書いている人なら、「わかる、わかる」と頷く個所が
多いだろう。日記を書くということは、自分の心をのぞきこむことであり、
読者とのやりとりに一喜一憂し、他サイトの書き手との関係に注意を払い、
ネット外の自分とネットの自分との関係についてあらためて考えることであり、、、
要は誰でも「心理学」に非常に近いところにいるのだと思う。
ネットの読み手はひとつのサイトのなかを自由に移動したり、リンクを通じて
つながっている他のサイトにも移動したり、また戻ってきたりするわけだが、
それを「読み手であるわれわれが自分なりのテキストをつむぎだしている」
という指摘が面白かった。
また、日記中心の個人ホームページがごく普通の一個人の記録になっていること(縦)、
そしてリアルタイムで他の人たちがどう生きているかを見ることができること(横)、
この縦と横の「絶妙の相乗効果」があるという表現もうまいなぁと思う。説得力がある。
ところで、「つながる」ということはネットの一番の特長だろうけれど、
わたし自身は現在流行のブログやMixiなどのソーシャル・ネットワーキング・
サービスについて、「安易につながりすぎ」あるいは「つながりたがりすぎ」だと
少々苦々しく思っているのだけれど、この本の著者たちはウェブログの将来について
できるだけ肯定的に見ようという姿勢のようだ。
巻末にはこれからブログを始める人へのガイドもあって、著者たちが
研究対象としてだけでなく、きっと個人的にもネットをたいせつに考え、
育てようとしていることが伝わってくる。好感の持てる本だ。
特に「歴史」を扱った第2章は重要だ。10年に渡るウェブログの歴史の中で、昨今のブームはたかだか1、2年のことである。そこにだけ着目した議論がなんと底の浅いことであるか。現在問題になっていることのほとんどが過去に登場済みであることがわかるだろう。「本質」に目を向けるいいきっかけになる章である。
そして、1997年の調査を元にした第3章。「Web日記」を「blog」に置き換えてもなんの違和感もないこと、また第4章と読み比べて、今と当時との違いはせいぜい「カネの匂い」の有無くらいである(カネの匂いはけっこう重要な軸ではある。が、あまり踏み込まなかったのは本書の立ち位置のせい?)。いまだに「Web日記とblogは違う」とか、自分の感覚だけで言ってる二元論者は、こういう事実を知るべきである。ウェブログは二値で分けられるものではなく、二次元スペクトルのどこかに位置づけられる、境界のあいまいなものなのだ、ということがよくわかる。
あと個人的には、第4章の「おわりに」が、ちょっと感動的な締め方だったのがよかった。そうそう、続けることが重要なんですよ。
特に「ウェブログの歩き方」は、著者たちの社会心理学の学識と、実際に使いつづけてきた経験と洞察に裏打ちされた、目的設定の考え方、やり方が具体的に例示されており、実にわかりやすい。ウェブログやSNSを始める前の人、はじめたばかりの人がどのような気持ちで臨んだら良いかがわかりやすい。
また、ウェブログの年表も貴重だ。90年代の日本での展開。タイプパッド以前の日本での日記サイト、コミュニティサイトの展開。これがきちんと整理されている。
この労作なくして、昨今の日本のマスコミによる、ブログもSNSも→アメリカ産→アメリカで流行→日本に飛び火という図式が定着してしまっただろう。なぜ、SNSやブログのユーザが増えるのか、それが、それ以前の日本におけるネットを使ったパーソナルコミュニケーションのあり方との連続性が、いつまでもわからぬままになっていただろう。
日本でも長きにわたって、模索され、実行され、雛形もあり、ユーザもいて、ニーズも顕在化していた。という点が、この著作によって公正に評価され、丹念に歴史が辿られているのである。
この他にも、気鋭の社会心理学者たちの実際のウェブログ体験を踏まえた洞察があふれる。
特に、昨今のmixiの盛り上がりに関する以下の洞察は本質をついているのではないかと思える。「アクセス・コントロールの機能を備えた日記を手軽に書ける点」が「目立たずにある程度の人に読んでもらえるのが良い」というニーズを持つ人が「相当多い」。
日本のマスコミも、あるいは、ブログ礼賛を目立って主張する人たちからも示されることの無い、日本のユーザのコミュニケーションニーズの本質なのではないかとも思える。
その他にも洞察には事欠かない。
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