ポピュラーサイエンスということなので、文系にも分かりやすく卑近な例をとり、細胞の働きを解説してくれている。ただ、完全に解明された!という状態のものを扱っているわけではないため、その可能性についてのみ言及している。そのため説明が非常に緻密で、誤解のないように細心の注意を払って書かれているため、逆にその説明が難しく思えるが、良心的な科学者であることがよく分かる。
読むうちにたんぱく質が大切だと思えてきた。というのもたんぱく質の働きで体が順調に動いているように思えるからだ。脳から指令を受けて体を動かしているにせよ、実際に活動しているのは細胞たちで(このへん私たちの意識とは関係なく無意識でも勝手に細胞がやってくれているのだからスゴイ)、受容体が情報を入力し、計算(過去のことを「記憶」していたりする)し、出力する。まるでコンピューター(デジタルとアナログをともに利用しつつ)のようではないか。それでは細胞には「意識」があるのか?!という話で、あったとしたらそれも怖い。(結局はパターンに応じた反射能力が、細胞の「意識」を錯覚?)そこから、細胞に「意識」があるなら、ロボットも「意識」を持つようになるのか?というSFでお馴染みの疑問に辿りつくのだが、果たして・・・。
人間の1つの細胞には約2万5千個の遺伝子があるのだという。そして体全体の細胞の数は約50兆にも及ぶらしい!いやいや、これは生物の授業で習っただろうと話かもしれないが、すっかり記憶から消去されているので驚いた。(そんな人のために、巻末には用語集があり、DNA、RNAの言葉の解説のみならず、クレアチンキナーゼなど、どういう働きをするものか、というようなことまで、ざっくり分かるようになっている)
福岡伸一の著作で、日々、人の体の細胞が入れ替わり、極端な話、去年の自分と今年の自分は実は全く同じではない、というニュアンスのことが書かれていたのが裏づけられるようだ。「生物の個体全体がクローン」とはいえ、どんどん年をとり、時には病気にもなったりするのだから、完全に同一とはいかず、似て非なるものであるかもしれない。
これだけ緻密な細胞の動きを知ると、逆に病気の原因を突きとめたりするのは相当に、大変なことじゃないかと改めて思う。細胞が突然異変しながらも周囲に順応し、うまく機能しているから健康なのだが、それが必ずしも成功するばかりとはいかないだろう。そんな細胞レベルの病気(があるとして)の話だが。
人の脳の記憶容量は大学の図書館10館分とのこと。(CD-ROMの分量が先に書いてあるが、1万7000万枚、との記述に?? 1万7000枚か1億7000万枚かのどちらかは、計算して図書館10館分が予想できれば、すぐに判明するのかもしれないが1館あたりの分量が分からないのでムリ)よく人は、脳の能力を数%しか使っていないとか言われるけれど、シナプスに刺激を多く与えれば、もっと働いてくれるのだろうか。ううむ。