読み終わってまず思ったことは、「もっと、この物語を読んでいたかった」ということです。一対一の戦いではなく、異能を駆使した戦いでもない、戦術がものを言う「艦隊戦」の面白さを十二分に教えてくれた作品でした。まるで嵐のごとく次々とウェスタディアに降りかかる苦難。そうした先の見えそうにない絶望感すら漂う戦場で必死に戦い続けてきたバドエルとアルファーニたち。特にバドエルの仲間を決して見捨てない熱い心と、アルファーニの意表をつく作戦の数々。この作品を読み始めたのは、4巻が出たころからでしたが、それからは新刊が出るたびに「どんな戦いをするのだろう」とわくわくしていました。そう思わせてくれる作品がひとつ、終わってしまったのは、少し残念ですが、同時に安心しました。ロアキアのその後の情勢が気になりましたが、物語としてはここで終わらせるのが最上だと思います。ウェスタディアは「真の独立」に向けて、確かな一歩を踏み出したわけですから。
そして、もうひとつ思ったことは、「やられた」でしたね。「双星」と呼ばれ、戦場で祖国ウェスタディアを守り続けた救国の英雄、バドエルとアルファーニ。突如として過酷な運命に対峙し、お飾りと馬鹿にされ、挫けそうになりながらも、少しずつ前に進み、「王」として成長していった女王、ルシリア。彼女たちの活躍や成長は、とても華々しく、ある意味で「わかりやすい」ものだったと思います。もちろん、彼女たちは、この物語の主人公です。ですが、真の主人公は、「双星」である二人を影から支え、「女王」に優しく、時には厳しく王の何たるかを教え、支え、仕え続けてきた一人の外務卿でした。異邦人でありながら、ウェスタディアを愛し、その行く末を誰よりも案じていた外務卿、カルロ・チェザーリ。彼の生き様は、誇り高く、かつ理想的なものだったと思います。自らの「生きがい」を守り通し、死んでいったのですから。
もう、これから先の未来でのウェスタディアを見ることはできません。ですが、チェザーリの遺志を継いだ者たちが、たとえ時間がかかったとしても、真の平和を銀河にもたらすことでしょう。そう、思います。