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ウイトゲンシュタイン全集 8
 
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ウイトゲンシュタイン全集 8 [単行本]

ウィトゲンシュタイン , 藤本 隆志
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社からの内容紹介

ウィトゲンシュタインの哲学的思索の軌跡は、20世紀の知的世界が遭遇した一つの事件であった。比類のない分析力のおもむくところは、論理的に完璧な言語の構想から、具体的な使われ方に文法を見出そうとするところまで及び、考察の照準は、一貫して言語の批判に向けられていた。

登録情報

  • 単行本: 479ページ
  • 出版社: 大修館書店 (1976/01)
  • ISBN-10: 4469110183
  • ISBN-13: 978-4469110180
  • 発売日: 1976/01
  • 商品の寸法: 22 x 15.8 x 3.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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39 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「なぜ犬は痛がっているふりができないか? 正直すぎるのか?」(250)--まるでどこかの漫才のネタのように思われるかもしれませんが、れっきとした哲学書の中の文章です。しかもハイデガーとともに20世紀を代表するといわれるウィトゲンシュタインの、後期の代表作「哲学探究」の中の。

「論考」をお読みの方にはご納得いただけると思いますが、ウィトゲンシュタインの言葉は大変魅力的です。表現は、自ら「論考」で求めていたように、明快です。ハイデガーのどこか神秘めかした謎めいた言葉づかいとは正反対ですが、でもその単純明快な言葉が大変な奥行きや深さ、広がりを感じさせます。哲学書を読む楽しみのひとつは、当たり前の(と思い込んでいた)ことに驚く、という点にあると思いますが、ウィトゲンシュタインほど当たり前のことに驚いている人も少ないと思います。

本書の中には過去の偉大な哲学者の名前はほとんど出てきませんし、難しい専門用語も余りつかわれていません。ですから、専門的にはいろいろな指摘が可能なのでしょうが、ただの素人として接しても全く違和感がありません。考えること、世界のありように興味がある活字好きの人間なら、なんの準備をしなくても彼の哲学の中にはいっていくことができます(--哲学書ですから、理解しやすい、とまでは言いませんが)。

「メロディを思い出す。でも、一瞬に<全部>を念頭に思い浮かべた筈はない。はじめから終わりまで心の耳で聴いた筈がない。でも、私はそれを<全部>知っていると確信している」(184)

「手が痛いとき、私の手が痛いのか、私が<手が痛い>と思っているのか? 人は手を慰めないで、痛がっている人を慰める。相手の眼を見る」(286)

ウィトゲンシュタインをもう少し読んでみたいという方には、全集9の「確実性の問題・断片」もお勧めです。

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46 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 哲学書と言えば、ドイツ観念論を頂点とした難解なものを思い浮かべる人が多いだろう。だが、本書は全く違う。そこには難解な哲学用語も、意味不明で理解不能な論理も全くない。すべては明快だ。当たり前のことしか書かれていないと感じる読者もいるだろう。本当に本書は20世紀を代表する哲学書なのかと訝しく思う人もいるだろう。

 しかし、実験や観察、世論調査などの実証的な方法を持たない哲学は、当たり前のことを愚に粘り強く考えていくしかない。本書はなによりもそのことを教えてくれる。本書を読み進んでいけば、私たちが日頃無意識のうちに信じていることの多くが、いかに疑わしいかが分かってくる。

 ただし、本書はウィトゲンシュタインの遺稿を死後弟子達が纏めたもので完成された著作ではない。そのため、ウィトゲンシュタイが言いたかったことが何かは明確ではなく、難解な用語と論理が充満した普通の哲学書とは別に意味での難解さがある。そのことは覚悟して読んだ方がよい。

 とはいえ、本書には、哲学の専門家でないと分からないような議論は一つもない。誰でも知的好奇心のある読者なら読み進むことができる。そして、読み進むにつれて、哲学とはこういう世界だったのかと目から鱗が落ちるだろう。
 哲学など自分には無縁だと思い込んでいる方に是非読んで欲しい1冊だ。

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6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ふんふん トップ100レビュアー
 ウィトゲンシュタインが、初期の代表作『論理哲学論考』などに自ら限界を感じて、大幅に立場を変えて著した後期の代表作だ。
 誤訳も何箇所か指摘されているが、全体的にとても読みやすい。

 本書は『論理哲学論考』のように論理の内面に沈潜するのではなく、「言葉をつかう」という実践を出発点として哲学を組み立てる。いわゆる有名な「言語ゲーム」論である。「第I」「第II」に分かれていて、「言語ゲーム」をめぐる有名な論考が登場するのはだいたい第I部。第II部は執筆時期もたしか異なり、より難解で、哲学の密度が一気に上がる。

 『哲学探究』の時期のウィトゲンシュタインの文章には独特のスタイルがあって、説明しなければならないことを構造的に整理した「論文」ではなく、禅問答のような問いかけが5行ずつぐらいの断章形式でひたすら続いていく。疑問が浮かぶ→考える→また問う→考えるという作業が繰り返される日記のようなメモなので、ウィトゲンシュタインと一緒にちょっとずつ悩みながら考えていくという感じだ。
 哲学や論理学の専門用語のようなものはほとんど登場せず、日常の具体的な生活の場面から出発して、あまり普通の人が考えないような問いかけをウィトゲンシュタインが発し続ける。「なぜ犬は痛がっているフリができないのか」などの問いは有名だ。私が好きなのはたとえば第II部の以下のような文。

 「わたくしは、他人の考えていることを知ることはできるが、自分の考えていることを知ることはできない。『わたくしはあなたの考えていることを知っている』と言うのは正しいが、『わたくしは自分の考えていることを知っている』と言うのは虚偽である。(哲学の全霊魂が、言語論の一滴へと凝縮する)」(xi節)

 「考えていること」という時、自分の、あるいは他人の心の中に生じている、“ 何か「考え」と名付けるべきもの”をイメージしようとしてはならない。ウィトゲンシュタインが言いたいのは、言葉が指し示す、あるいは写し取っている真の実在について考えるのではなく、「知る」「考える」という言葉の使い方について考えよ、ということなのだ。なぜなら、「語の意味とは、言語内におけるその使用法」(第I部§43)だからである。
 上の一節が主張しているのは、自分の考えを「知る」という言い方はしないのだということ、そして「言い方」の問題こそが実はとても重要な論点なのだということにほかならない。

 この本のなかでウィトゲンシュタインは、ユーモアに富んだ具体例をいくつも挙げて、繰り返し繰り返し、我々の抱いている固定観念に挑戦し、我々の考える「意味」という概念に揺さぶりをかけていく。あまりに激しい揺さぶりなので、ともすれば、我々を意味のカオスへと誘惑しているかのようにも感じられてしまう。しかしそうではないのだ。ウィトゲンシュタインは確かに意味の「無根拠性」を暴露しはしたし、それが哲学上の重要な成果と言われているけど、それとともに我々を、実践的な「言葉遣い」、日常的な「生活様式」という、新たな確実性の拠点へと導いてくれたのである。

 一筋縄で読み解くことを許さない、難解というよりも「謎」の本ではある(笑)。だがそれでも、この「哲学を殺した男」の後期思想の代表作が、私のように一知半解の素人読者にとってすらとても刺戟的で、智的な興奮をもたらしてくれる。
 邦訳はこの全集しかない。4,500円を支払う価値は十分にあるだろうけど、できれば岩波文庫あたりから新訳が出たら良いと思う……。
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