長らくニューイヤー・コンサートの顔であったボスコフスキーの録音は、このほかにもEMIやヴァンガードから楽団の名義を変えたものが出ていますが、何といってもこのデッカの集大成が最高です。録音会場は、一部のムジークフェラインでのライヴを除きすべてゾフィエンザールですが、まさにウィーン・フィルの最良の姿が記録されており、いまでは随分と失われた柔らかくふくよかな音のなかに身を浸すことができます。LP時代、デッカ初のデジタル録音となったライヴのニューイヤー・コンサートもむろん収録されており、それはそれで楽しめますが、デッカのウィーン・フィルの音は、やはりゾフィエンザール。LP時代この一連の録音を発売ごとに一枚ずつ買い求めていた往年のレコード愛好家の密やかな楽しみを、かくも容易にいちどきに手に入れられるのは、勿体ないような気もいたします。膨大な収録曲の数ですが、どの一曲にも堪らない魅力が満ち溢れています。CD5のオペレッタ「騎士パスマン」のチャルダッシュなどはその一例で、ややオン・マイクで録音されたヨーゼフ・シヴォーの哀愁に満ちたヴァイオリン・ソロとルドルフ・ルーハのツィンバロンが、聴く者を陶酔させます。いわゆる一生もの、愛好家の基本的ライブラリーとして永遠の生命をもつセットです。