バースディ・ブルーあたりからだろうか、ヴィク・シリーズは胸のすくアクションではなく、社会と人間を見つめるようになった。ハヤカワの編集部は帯に書いているようにこの作品を「巨悪に喝」との惹句で表現していると思っているのだろうか。今回のヴィクは疲労困憊の極みで到底「胸をすく活躍」は望めない。そうではなく、アメリカ社会が(特にここではシカゴの下層社会が舞台だが)病んでいるのと同じほど、彼女は事件を解決しながら肉体だけでなく、心も傷つくのだ。個人的レヴェルだけではヴィクの扱う事件はもう解決できなくなっている、そんなアメリカ社会の病巣をサラ・パレツキーは描こうとしているように思える。そんなヴィクにわれわれは目を離すことができない。