トランスパーソナル心理学の初期の理論的指導者であり、現在は統合的ヴィジョンに基づく全象限・全レヴェルのアプローチを提唱しているアメリカの哲学者・ケン・ウィルバーについては、日本では、これまでなぜか男性によって書かれた入門書や解説の類いしか存在しなかった。
本書は、女性の視点で書かれたウィルバー入門であり、文体や中で出てくる例がとても具体的で、わかりやすい。
ウィルバー理論の解説は第3章からやっと出てくるが、それまで著者が丁寧に語っているのは、「全てはつながっている」ということ。この、いわば螺旋状の助走が無ければ、ウィルバー理論の魅力は味わえない仕掛けになっている。
それに、著者はよくある「お手軽スピリチュアリティ本」のように、セミナーや修行をすることによって、スピリットがわかるなんて、ちっとも思っていない。そこにはマッチョな超人願望も無い。「視野を広げること」。自分と宇宙とのつながりが、科学的にも宗教的にもわかってくること、そのことから、スピリットに対する理解は深まっていくと考えている。道は長いが、とても明るい。老獪なナイーヴさに満ちたメッセージで、その道への誘いをしているのである。
読み終わって、なんだか優しい気持ちになり、空を見上げてみたくなる本は、一生のうちでどれだけあるだろうか。著者は何度か、読者に空を見上げてみるように語りかけている。そうすると、素晴らしい星空でも、雨の日でも、スピリットの声が語りかけてくれると、あたりまえのことを気づかせてくれる。
奇跡とは、そういう意味なのである。