著者によれば、ジェイムズの核心は「会話」である。
「会話」は、議論や論証とは違い、相手をやっつける、よそよそしいものではない。
もっと気楽で散歩のようなものである。
本書の中で著者はジェイムズと会話し、それをとおして私たちもジェイムズと会話する。
著者はジェイムズ哲学の最も優れた点を「触れたものの人生をより良くすること」だと指摘する。
実際、ジェイムズの著作(本書で引用されたものだけでなく)を読むと、そのような感銘を受けずにはいられない。
そこからジェイムズの誠実さ、真摯さが(たとえ翻訳であっても)伝わってくるのだ。
ジェイムズへの手引きとして、一読をお薦めしたい。
本書の構成
前半 : ジェイムズの生涯と彼の思考のまとめ
後半 : ジェイムズからの引用集(とくに思考のスタイルと世界の見方、道徳をあつかった部分)
補足
○:巻末に日本語で読めるジェイムズの著作が載っているので便利。
全体をとおしてコンパクトに書かれており読みやすい。
×:副題「賢く生きる哲学」は誤解を招く。自己啓発の類ではない。これは著者のジェイムズ観とも関連がある。著者はジェイムズを穏やかな啓蒙主義者かなにかと考えている節があるが、私はまったく賛成できない。帯の「ジェイムズのすべて」も追記に書いたとおり嘘。
追記:本書では根本的経験論や純粋経験の形而上学はまったく扱われていないので、そちらに興味のある方は、沖永宜司『心の形而上学』あるいは伊藤邦武編訳『純粋経験の哲学』をお読みください。