仏典を読む人-読経するだけでなく内容を解釈する人間-にとって、
『中論』は大乗経典の根本でありぜひとも読んでみたい書物である。
しかし、中村元『竜樹』に含まれる物のような「翻訳」を読んで解釈できるのは
印哲出身者とか坊さんとか余程のマニアだけであろう。
かといって『中論』についての本を代わりに読むのは他人任せで面白くない。
日ごろそう思っている人(いるのか?)にとっては、
少なくとも『中論』が一通り解釈できるという点で非常に貴重な本である。
ただ、黒崎氏は『中論』の原点を読めず翻訳をつなぎ合わせているのであり、
また解釈が余りに言語哲学的(ウィトゲンシュタイン的)アプローチなので、
仏教学者からすると勘違いをしたことを言っているのかもしれない。
が、間違っているにしても「読めない」という状況より数段にマシであるし、
哲学経由で仏典を読んでいる自分にとっては結構「腑に落ちる」解釈である。