古代ケルト民族の風習・イコンが綺羅星の如くちりばめられた驚愕のイメージの奔流。多用される仰角アングル。味のある少しざらついたフィルムの質感。ノスタルジックで不思議と心に響いてくるフォークソング(名曲揃い!)。凄い作品です。凡百の言葉を綴っても実際のフィルムの圧倒的迫力を表現し得ません。これぞカルト映画の金字塔にして大傑作、英国映画史上のマスターピースです。
初めて見た時からもう虜でした。パブの看板娘がセイレーンの様に蠱惑的な歌を唄いながら全裸の体を振り乱し警部を誘惑。キリスト教的禁欲の戒めと葛藤して懊悩する警部。壁越しに触れ合う悶々とした夜。夜が明けて「部屋に来てくれなかったのね、呼んだのに」この時点で私も警部の如く完全にノックアウトでした。そしてすぐにマザーグース的な不思議な歌とともに紅白リボンを子ども達が腰に結わえ付けて踊り編み上げて行き、ストーンサークルで陰部も露わに少女達が輪になり火を飛び越え唄い踊り懐妊の願いを込める。動物のペルソナも強烈な印象を残します。そもそも壁に掛けられた剥製動物の首とか薬屋の店頭に並ぶ気味悪い具材(仔牛の胎児の漬け物とか)を散々見せられているのですからザワザワするのは当然。こういう気の利いた所はハマー映画の伝統なのかも知れませんね。この様に全編通して「死と生け贄」「性交と新生」のイコノロジーがぎっしりとちりばめられおり、日本初公開からまだ10年少ししか経っていないというのに絶対的なファンが存在するというのもうなずけます。
衝撃のラストでは「太陽神などいない!」という苦し紛れの答弁をあざ笑うかのように村人の雄々しい民謡の合唱が轟き、ウイッカーマンが焼け崩れた影から夕陽が限りなく紅く差し込みます。太陽神はそこにいたのです! これぞ完璧な幕引き、そして限りなく恐ろしい閉幕でした。こんな傑作を見ない手はありません。廉価版も出ています。是非一見を。