有名ブランド「イヴ・サンローラン」の創設者イヴ・サンローランの
ドキュメンタリー映画とされていますが、予想に反して、
ファッションのことはあまり出てこず、
彼の公私のパートナーだったピエール・ベルジェと共に
二人で集めた美術コレクションや、時を過ごした邸宅の映像を中心軸として、
ベルジェが思い出と、サンローランへの想いを語っていきます。
次から次へと、いっそ、断片的でとりとめがないほどに切り替わり続ける映像は、
サンローランの50年来のパートナーであったベルジェの脳内回想を
そのまま観ているかのような錯覚に陥らせます。
このとりとめのない印象を与える映像展開は、序盤で、観る者に対し、
サンローランの死後のベルジェのある選択に疑問を抱かせますが、
それが一層、回想的世界に惹き込んでいく要因となっています。
映画の最後の最後で、ベルジェ自身が語る短い間接的な言葉が、
どんな直接的な言葉よりもその疑問に的確な答えを与えているところは芸術的と言ってもよく、
まさに、緻密な構成美のなせる業。
沈鬱な音楽が、それを際立たせています。
この映画の真の主人公は、イヴ・サンローランではなく、
「イヴ・サンローランを想うピエール・ベルジェ」という気がしました。
ただし、あまりにも切り替わり続ける画面がめまぐるしくて、
展開についていけない瞬間も確かにありました。
そのせいか、映画館に観にいった時には、
まだ半分も終わってないのに席をたった人が3組ぐらいいて、
「もったいない」と思うことしきり。
でも、最後まで観た人の大半が、パンフレットを購入していましたから、
最後まで観た人の評価は悪いものではなかったと思います。
個人的には、資料映像、俯瞰、分析、証言、回想、追慕など、
確かにドキュメンタリーの特質を持ちながら、(入り混じるシーンの効果で、)
103分の「一物語」として完結しえる、
虚構的、とでもいうようなストーリー性を含む
独特の脚本構成を持っているのが本当に好きでした。