人類は皆、20万年前のアフリカ女性「イヴ」の子孫であるといわれている。オックスフォード大学で遺伝学の教授を務める著者はさらに、6億5000万人にのぼる現代ヨーロッパ人の母系祖先は7人の女性に分類できるとしている。この女性たちに名前をつけると、アースラ、ジニア、ヘレナ、ヴェルダ、タラ、カトリン、ジャスミン。それぞれ、別の時代に別の場所で生活を送っていた女性たちである。
ミトコンドリアDNAには、母親からしか受け継がない、遺伝子の組み換えが起こらないという2大特徴がある。このミトコンドリアDNAをたどっていけば、ヨーロッパ人の誰もが、自分の祖先を知ることができるのである。そして、人類の歴史―― 我々はネアンデルタール人の末裔なのか、はたまたクロマニョン人の末裔なのか―― を知ることができるのだ。
本書は、こうした研究、発見にまつわる裏話と、それがヨーロッパにかぎらず世界中の人々にとって意味するものを明らかにしている。そして、ホモ・サピエンスの歴史が遺伝子に記録されていった道筋について語っている。
誰もが人類の歴史を遺伝子の中に秘めている。その歴史は、はるか昔の祖先から、実質的になんら変わることなく受け継がれてきたDNAパターンの中に含まれているのだ。人間の細胞はすべて、そうした驚異的な旅を乗り越えてきたもの、つまり遺伝子を運んでいるのである。これは大いに誇りに思うべきことだと著者は言い切っている。そして、本書はユーモアをもって現代ヨーロッパに潜伏する人種差別主義を批判しているのである。我々は、母をたどっていけば誰もがつながっているのだから、と。(冴木なお)
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「事実は小説より...」とはよく言ったもので、下手なミステリーよりも"物語"の醍醐味がある。DNAという謎に満ちた物質を手がかりに途方も無い時間を遡っていく過程には、真実を読み解く楽しさ以上に冒険的な面白さがあった。後半で娘たちの生活を想定してフィクションにしているが、かえってこの部分は色あせて見える。真実に勝るものなしということか。「餅は餅屋」の域を外れてたことでの失敗との印象。
素人にはこれが学説としてどれ程のものか判断はつかないが、こういう世界やこういう考え方があることを気軽に読めるのがうれしい。「それにしても、7人の娘たちにとってはこんな未来にこんな風に自分達のことが読まれているとは想像を絶する話だろうな」と妙な感覚まで浮かんでしまう。
語られる。読者はこのギャップに戸惑うかもしれない。しかし、著者は考古学や遺伝学が無味乾燥の科学ではなく、人類進化の歴史は我々現代人の親子関係の延長線の個人個人の上に存在するのだということを主張したかったのだろう。
本書を読んで、過去現在未来と続く人類の進化をまさに今ここに生きているじぶんが担っているということを強く感じた。
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