仕返しから平和は生まれない。
相手を赦すことのみが和解への道である。
自分の両親を目の前で虐殺されて以来、まったく口を利かなくなった黒人の少年に対して、加害者の白人男性がそのときの真実を少年に告白し、泣き崩れて赦しを請う場面がある。「俺が養育費もすべて面倒を見るから赦してくれ!」 その白人の男をしばらく見つめた後、そっと彼に近づき、彼の肩に手を回して抱擁する時の少年の表情が、この作品のテーマを象徴的に物語っていた。
赦し難い悲惨な過去。いまだに根強く続く人種差別。著しい貧富の格差。この重たいテーマを、ジョン・ブアマン監督は、短いカットを多用し、それらを小気味良いテンポで紡ぎ合わせていきながら、その随所にのどかで美しいアフリカンミュージック散りばめることによって、決してDepressing ではない、逆に南アフリカ特有のポジティブな明るさの中に、巧く表現している。
特に、黒人たちのコーラスによる賛美歌の美しいハーモニーは、人々の心の傷を癒し、生きる喜びと明日への希望をもたらしてくれる。
アパルトヘイト時代も、廃止された後も、この歌を命の糧にして黒人たちはたくましく生きてきた。これからも、この明るくて優しい歌声が、新生南アフリカが目指す真の平和国家の実現への架け橋となっていくだろう。
コーラスの美しさとともに、不思議な余韻が残る映画である。