ポール・ブレイは多作のピアニストであり、その多くは駄作でもある。
とくに近年の作品は聴くに堪えないほど退屈極まる。ステープル・チェイス盤などは、よほどお金の余ってる人にしかお薦めできない。
そこそこまともな作品は、1960年代~70年代前半に集中している。なかでもベーシストのマーク・レヴィンソンと共演した数作は、よほど相性がいいのか、いずれも秀作である。ECM盤のせいで耽美的などと評されるブレイだが、マークとのトリオでは常にソリッドでタイトな演奏が繰り広げられる。触れれば切れるような、硬質抒情系フリージャズといったところか。これがゲーリー・ピーコックに替わると、(たぶんタイプが近すぎるためか、なにせスワッピング友達)、なんだかまったりと軟質化してしまう。
Fontanaレーバルからリリースされた「Blood」は、私にとってポール・ブレイのベストであり、長年の愛聴盤である。その「Blood」と正しく等質の演奏をライブで試みたのが、このアルバムである。演奏の密度は「Blood」に及ばないが、ライブならではのスポンティニアスな展開には心地よく身をゆだねられる。
「Open to Love」だけが、ポール・ブレイではない。もし、何か駄作を聴いてブレイを見限った人がいるなら、一度このアルバムか「Blood」あるいは「Rambling」あたりを聴いてほしい。ワンアンドオンリーのブレイがここには屹立している。