主人公のジャムールはパキスタンに住むアフガニスタン難民だ。多分、中学生くらいだろう。難民は皆ここの生活に未来が無い事は分かっている。彼も同じだ。
ペシャワールに住む年上のエナヤットにロンドンへの密入国ブローカーを紹介すると同時に、英語が出来る自分を連れてくようにアピールする。そしてそれに成功する。年齢に似合わぬ逞しさを彼は随所で見せる。
シーンの合間にパキスタンの生活が挟まれる。路地裏で遊ぶ子供達の笑い声、食堂のざわめき、夜の活況。ウィンターボトム監督は良き旅行者でもあるようだ。その国らしさを綺麗に切り取った映像を随所に挟み込む。
脚本にはこんな映像は描けないだろう。監督が魅力的に感じた瞬間を撮ったのだと思う。そうではあるが、旅路の風景はジャムールの心象を映す役割も担う。
村を出発する朝、ようやく歩き始めたくらいの子供がジャマールの服の裾を掴んで離れない。追払うジャムール、離れない子供。子供の可愛さと同時に、村での彼の慕われぶりも判る。
アフガニスタンを抜けてイランに入ると周囲は一変する。整備された道路、夜も明るい豊富な街灯。自分の服を「みすぼらしいから捨てろ。」と言われるのは結構ショックだったろう。でも、そんな事には頓着しない。
テヘランに来れば車の洪水、ベールのみで闊歩する女性、そして巨大なアイスクリームがある。アフガンやパキの辺境と比較すればイランは圧倒的に豊かだ。まるで時代が違うようだ。
多くの密入国は途中で失敗する。トルコからイタリアのトリエステに渡る船でジヤマールも一人になる。しかし、彼は逞しさを発揮して、自分の旅費を確保し前に進む。
豊さは時に残酷だ。もう二度と会えないエナヤットや故郷の人々への思いで悲しみに満ちてるのに、ヨーロッパの夜景はキラめいて美しい。
エンディングは再び故郷の村を映す。再びこの旅路に思いをはせれば、そこにはkmでは表せない遥かな距離がある。