アーロン・パークスは米シアトル出身現在20代後半の若手ピアニスト。生まれながらの神童で、14歳にて飛び級でワシントン大学
に入学、数学・コンピュータ・そして音楽といった諸専攻を学ぶ、さらに16歳にてジャズ教育を専門とするマンハッン音楽学校に転入。
その後はトランペッターであるテレンス・ブランチャードを始めとした数多のアンサンブルの一員として数々の名盤に参加。
本作は全曲彼自身の自作曲。カルテット構成で、マイク・モレノ(g)、マット・ペンマン(b)、エリック・ハーランド(ds)という布陣。
アーロン自身はピアノを中心に、時に他楽器を持ち替え作品に多彩な色どりを添えるが、何といっても一番の魅力はアーロン自身
のピアノ演奏だ。ブラッド・メルドーやビル・エヴァンスを引き合いに出されることが多い様だが、音粒の立った滑らかで感傷気味(
しかし決して爆発しない)の演奏スタイルは抒情という言葉が似合う。しかし新世代のピアニストらしく電子音を織り交ぜたり、また他
メンバーが造るリズム隊に乗せて調性を絶えず変える前衛的な旋律を繰り出したり、敢えてリズム隊とは拍子をずらして旋律を奏
でたりする実験性(「Travelers」)と斬新なスタイルは聴いていて身を乗り出す魅力に溢れる。彼のリリカルな美しさが直接的に表れ
た3分弱のソロ「Into the Labyrinth」は作品の白眉だ。彼とアパート部屋をシェアする、本作の写真を担当した日本人カメラマン、マ
モル・コバヤカワによる彼の姿。薄暗いながら後ろに映る古びた建物と絶妙な色彩が織りなす神秘性。一見怖いが踏み入れずに
はいられない音の迷宮の魅惑。深く深く沈みこむ音の美しさから得られる官能性。この作品全体の空気をも表している様に思える。
全体にシックで洗練された彼の感性そのものが楽曲と演奏そのものに見事に表れた傑作。これがデビュー盤なのが恐ろしい。是非
次作以降はリアルタイムで追いかけてみたい鮮やかな才能の持ち主だ。