何もいじくらずに普通に演奏するだけでも下手なジャズよりもよっぽどお洒落だったり感動的だったりするこのノクターン集をジャズにするとは、どういうことか。しかも全曲である(ノクターン全曲演奏は、普通に演奏するだけでも偉業である)。興味津々で聴いてみたら、素晴らしかった。必ずしも定型的なジャズ演奏というわけではない。リズム的にも必ずしもジャズとはいいきれないし、宣伝文句が謳うほどスウィンギーな演奏ばかりでもないし、形式的にも、主題があって、それをアドリブで変奏して、また主題に戻る、というような定型的な演奏では必ずしもない。原曲の三部形式の中間部をジャズ的なフレーズに崩して演奏している曲もあるが、素材となった原曲が、全編使用されているわけではなく、しかも、ほとんど原型を留めていない曲も多い。その意味で、原曲の解釈という範疇には収まらず、原曲に触発された新たなピアノ音楽の創造になっていると評すべき曲も多い。しかし、その仕上がりは、さすが様々なクラシックとジャズとの融合を続けてきた第一人者のジャック・ルーシェで、上質なフランス料理を食べたような、満足で、うっとりした気分に浸れる。何料理に例えるべきかはわからないが、時折でてくる陽気な演奏も楽しい。