カロリーベースで食糧自給率が40%しかない、という危機的な日本でこそ話題になるべき映画だったのに、この無視のされようは、多くの日本人の危機感のなさを反映しているのだろう。
本作品は全くの実話に基づいているそうだ。だから登場する会社名などは全て実名。ここで扱われているのは、約10年前に米国ADM社が日本の味の素その他の会社を巻き込んで行われた価格カルテルの内部告発事件が題材だ。
ADMというのは、知らない方にお知らせするが、世界の穀物3大メジャーといわれる1社。3大メジャーとは米国カーギル、米国ADM、オランダのブンゲ、という3社を指す。この3社で世界の穀物(主に麦とトウモロコシ、大豆)の大部分の貿易を牛耳られている、ということは危機感がなくとも知っておいたほうがいい。
そして米国は世界最大の穀物輸出国、アジア地域は中国を含めて現在、世界最大の穀物輸入地域になっているという恐ろしい現実を知っておくべきだろう。戦後、学校給食にパン食を導入し日本に麦食の習慣を根付かせたのは、GHQとつるんだ穀物メジャーの策略であることも、この際だから覚えておくといい。
さてそんな国際的な超ビッグネーム・カンパニー内での、日本最大の食品メーカーを巻き込んでの脱法事件を描いた本作が、エキサイティングでないわけがない。
マット・デイモン演じるこの告発者の主人公は、実は、最初はどうも私的な問題があったらしく、どういうわけかそれを隠したまま内部告発に及んだがために、話がどんどん、ややこしくなっていく。その紐の絡まりかたがどうにも可笑しくてたまらない。シリアスとブラック・コメディの中間ぐらいを狙ったソダーバーグの演出センスの良さは相変わらずだ。本当にうまい監督だと思う。