著者の経歴を読み、少し嫌な感じがした。
欧米人の一部には自分のキャリア形成の手段として途上国を一年程旅行する人がいる。文句を吐き続けステロタイプな分析をして悦に入ってる連中だ。
出足は悪い予感的中という感じである。中国の電車の劣悪さやイカサマ賭博の話を今さら書いてどうするのだ。過剰な自意識と不信感に満ちた文章は読んでて哀れだ。
だがパキスタンに入る辺りから文章が柔らかくなる。イスラム世界は世界のニュースの舞台なのに、実際に生きている人の声が聞こえて来ない。ここで自分が伝えるべき何かを見つけたのだと思う。パキスタンの医学生の当たり前な夢。イラン人の本音。シリアの性的マイノリティの声。イエメンでのフセイン時代の評価。
ありふれた経験を力んで大袈裟に描いていたのが、内容が深まるにつれて素直な文章に変わった。現地の人との会話からは、相手を真直ぐに見つめ率直に話をする姿が浮かんで来る。
そしてアフリカへ。
中村さんは本質的に内省的な人のようだ。人々の過酷な生活を目の当たりにし、自分の考えを修正・否定しながら少しづつ思索を深めて行く。彼らに対し何が出来るのか?
しかし残念ながらこの後の文章は貧しい。
ビジネススキルの重要性はそれが機能する先進国にいるから容易に学べるもので、機能しないアフリカで知らない人をなじるのは酷ではないか。
それにしても著者の警戒心は異常だ。相互不信を深めるだけで、リスクを避けるために役立つとは思えない。現地の人からみればただの道化ではないか。
ストレスのせいか傲慢さが増す。同時に物の見方が浅くなりテレビや雑誌のアフリカと何ら変わらなくなる。もっと軽やかに旅行している女性は今時珍しくない。苦労は著者の選択の結果であり表現する価値は無い。
随分厳しい事を書いてしまったが、評者は著者の感受性は嫌いではない。もっと豊かな文章を書ける気がする。次回作に期待する。