最初はよくあるインド好きのヒッピー文学と思いきや、インドはただの舞台でしかなく、その内容はボルヘスの作品のように幻想と思考と知性に満ちているといえるだろう。インドの独特の風土を利用しながら、いつの間にか自分がどこにいるのかわからなくなるような不思議な感覚、友人探しという読むものを引き付けるミステリー性を備えながら、哲学的な命題を探るような短編を重ねあわせたような奇妙な旅行記。最初に書かれた無意味とも思える命題が結論のあっけなさを納得させる循環性はポーの作品と近いような気がした。とにかく幻想的で非常に面白い作品である。訳者の須賀氏が解説で述べているように、「だまされたと思って」是非一度読んでいただきたい本の一冊である。