ミッタル・スチールがアルセロールに対する敵対的買収を成功させるまでのストーリーです。
取引規模が大きいため経営者、従業員、株主、政治家さらには国家等、案件に関わる利害関係者が非常に多く、テーマも鉄鋼、M&A、法、会計、広告、企業統治、政治と、かなりの多岐にわたります。たとえば、
・・・関与する規制当局は五つあった。まず、ルクセンブルク金融監督庁、フランスの金融市場庁、スペイン証券取引委員会、ベルギーの銀行金融保険委員会は、それぞれが買収に対し管轄権を主張していたが、基本的な企業法はルクセンブルクに従うとしていた。もう一つは、ミッタルが上場している・・・オランダ証券監督局だ。それに加えてアメリカの証券取引委員会があるから・・・ここまでクリアしても、規制当局はまだあった。ブリュッセルのEU競争総局、ワシントンの司法省反トラスト局と連邦取引委員会、カナダ競争局だ。・・・p.117-p.118
といった感じです。が、もちろん、この本から学ぶべきはそこではありません。僕はビジネスの楽しさとともに、本書の案件から類まれな「フェアネス」の感覚を感じたと告白すべきでしょう。結果として経営陣は勝者と敗者に別れますが、それ以外ではほぼWIN-WINの関係となる案件であり、さらに不正、犯罪がありません。血生臭さなく、これだけのスリルとクリエイティビティーが楽しめるのはビジネスゆえ、取引のフェアネスゆえでしょう。一貫したメッセージは、
明確な企業論理と論理的根拠を持っているものが勝利するのです。・・・p.181
という感覚でしょうか。
・・・周知のように、大統領は外国人を嫌っていた。「この計画には戦略目的がない。ただのマネーゲームだ」会合が終わると、シラクはメディアに言った。・・・p.155-p.156
いかにしてこのような大変な買収を成功させたのか。力が出て来る本です。興味がある人は是非。