取り上げられているインドの企業は、日本ではほとんど知られていない「ウィプロ」という企業である。インドのIT企業はNHKの特集で取り上げられた「インフォシス」のほうが知られているであろう。しかし、取り上げられている企業の取り組みは大変先を読んだ取り組みのように思われる。
インド=コストの安い、ITの外注先という感覚のほうが強い。「ウィプロ」では、コストが安いだけでは国際的な競争力を維持できないと考え、高度な技術の習得、研究開発を行うだけでなく、いかにして優秀な人材を自分たちの会社に引き止めておくのか、主要顧客である欧米の企業に対して低コスト以外のアピールのポイントとして、どれだけ高付加価値のサービスを提供できるのかまでを戦略的に考えている企業として、紹介されている。
すでに、資産価値でも世界最大のSI企業である米国のEDS社を抜き、大企業に成長している。その上、大企業でありながら、社内でベンチャービジネスを立ち上げることが可能であったり、企業内大学院が用意されていて働きながら修士の資格が取れなど、中小企業のような俊足さを持ちながらさまざまな魅力がいっぱい詰まった企業に見える。
この本を読むと、技術立国といわれる日本のIT企業の影がとても薄く感じられ、今後の日本のIT産業について、大変大きな不安を感じずにいられなくなってしまった。