本書は放送大学の教材として編まれたものであり、全15講を通してリグヴェーダ・ウパニシャッド・六師外道・ジャイナ教・初期仏教・二大叙事詩・大乗仏教・六派哲学を概説し、イスラーム移入までを扱っている。
本書の性格が「講義用テキスト」ということもあり、筆致は非常に分かりやすく、要点も簡潔にまとめられているので、インド思想全体を知る一歩目の本としては絶好の入門書と言える。逆に、非常にコンパクトな内容ということで、教場での教員の補足を前提としている、という印象は拭えないが、これは欠点というべきではない。ただ唯一物足りないのは、インド思想の中心とも言うべきヴェーダーンタに関する分量が少ないことである。
いずれにしても、古代から近代に至るインド思想の潮流をごく簡単に押さえよう、というインド思想初心者の方には広くお勧めできるものである。それだけに、放送大学の教材という点で終わらずに、(末木文美士『思想としての仏教入門』のごとく)新たな体裁によって再び出版してほしいと思う。