フルクースの襲来を受け危機一髪の〈テラ・パトロール〉を救出するローダン一行の活躍とテラ・ルナに潜入した特命コマンドと具象クレルマクの手先との欺瞞に満ちた攻防戦を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第403巻。本巻の執筆者は円熟の境地の両ベテラン、マールとエーヴェルスです。本書で〈テラ・パトロール〉のメンバー達はやっとローダン一行と合流しまして、その結果必然的に出番が減るだろうなと予想されるのが寂しい気がしますが、幾多の苦難を共にして来た仲間達の団結力と友情には大きな魅力がありますので、これからもチームとして活躍の機会を多く与えて欲しいと願っています。
『インテルメッツォからの逃亡』クルト・マール著:〈テラ・パトロール〉の隊員達を捕虜にすべく惑星インテルメッツォに乗り込んで来たフルクースの動きが活発化し、予告無しで突然に時間ハンマー現象が襲い掛かる大混乱の中で危機一髪の状況となる。本編ではワリク・カウクが黒毛皮族フルクースのフアトルと遭遇し互いに助け合って生命の危機を乗り越える事で友情を芽生えさせる人間ドラマに大きな感動を覚えました。またマスクの男アラスカと仲間達の再会シーンには感情を曝け出さずクールに抑え気味でありながらも胸が熱くなりました。『火星人と分子変形能力者』H.G.エーヴェルス著: ローダンは苦しい現状を打破しようとテラに宇宙漫才コンビのタッチャーとロルヴィクとグッキーとラスを、ルナにブリーとワリンジャーとロワとロボットペアのロミオとジュリエットをそれぞれに派遣するが、そこには自在な変身能力を持つ具象クレルマクの手先の分子変形能力者カーレクとナフーンが待ち構えていたのだった。本編ではロルヴィクが自分の仕掛けた悪戯のせいで超能力を喪失してしまった事に責任を感じたのか、タッチャーが何時になくロルヴィクの身を真剣に心配する姿が珍しく少しホロリとさせられます。最近のエーヴェルスが力を入れている分子変形能力者(別名MV)は変身した犠牲者の人格や知識を十分に把握し切れていない為にあっさりと馬脚を現してしまう所に、完璧な悪人でなく何処か憎めない部分が感じられ、また悲運の歴史を持つ種族だけに同情の余地もあって、今は困難だとは思いますが何時かテラナーと和解して味方になれないだろうかと考えました。
本巻の翻訳者二名を代表する青山茜氏のあとがきはローダン翻訳の開祖、故松谷健二先生が訳された戦争文学を紹介し、作中に登場するドイツ戦闘機隊の悲劇的な歴史についての自論を述べられています。少数の人類を人質に取られ更に絶不調のロルヴィクも囚われの身となった圧倒的に不利な状況の中で孤軍奮闘のタッチャーは如何にして逆転勝利に導く事が出来るのか、次巻でのエーヴェルスの技巧の冴えに期待しお手並み拝見と行きましょう。