以前から気になっていたが遅まきながら読了した。“インテリジェンス”とは何か?それは国家間の外交でのイニシアティブを取るための、そして他国の自国への脅威から身を守るための“情報戦”に必要不可欠な武器だと本書は定義付ける。外務省きっての辣腕情報分析官と元NHKのワシントン支局長、国家機関の中枢頭脳ふたりによるいきなり序章での虚々実々のやり取りで読者の好奇心を煽る辺り、これもひとつの“インテリジェンス活動”なのかと勘繰ってしまう(笑)。ゾルゲ事件、イギリス旅客機テロ計画阻止、チェチェン紛争、湾岸戦争と歴史的史実の裏に隠された駆け引きと鬩ぎ合いに、話半分に差し引いてもまるで国際諜報小説を読んでいるような感覚に陥る。世界を取り巻く情報分析が矢継ぎ早に語られる中、米英の諜報活動の違いは相互のメディア環境の影響が大きいとか、ネオコンは元はトロッキストグループからの転向組であり、普遍的な価値観で全世界をアメリカ的民主主義革命するのが目的とか、ロシアのプーチンとイスラエルの蜜月状態とか、眼から鱗的な発言も多く興味深いが、他のインテリジェンス大国に比べ、我が国のそれの脆弱さを憂う記述、その責任の多くは現在の政治システムと外務省のダメさ加減にあるとの指摘は、その最前線で暗躍し“ラスプーチン”と呼ばれた佐藤優の言葉だけに重い。手嶋龍一はいざしらず、「国家と神とマルクス」で、国粋主義からマルクス主義、右翼から極左までの言説を対等に論じていったその強靭でバランスの取れた自由主義者佐藤優を知るテキストとしても有効。