ケン・ウィルバーのインテグラル理論に関する実用篇と呼ぶのがふさわしい本である。インテグラル理論については最近になってわかりやすい解説書も出版されるようになり、わが国でも注目度がアップしてきているが、この本ではさらに一歩踏み込んで、読者それぞれの具体的な状況に適用して考えることができるような構成になっている。
特に目新しいのは、通常のビジネスマンが仕事の現場に使えるような材料やアイディアが数多く取り上げられている点だろう。このあたりは、人材開発にかかわってきた作者自身の経験が役立っているのではないかと思う。理論面を勉強しただけでは、このような説得性のある内容を展開するのは中々難しいはずである。また、日本人の作者が自分の言葉で書いているので、海外思想の紹介にありがちなもどかしさや国内の実状との齟齬を感じることもなく、逆になるほどと膝を打つような箇所がいくつもあった。本書で扱っている四領域分析というシンプルなツールが、これほど大きな力を発揮するものだとは正直なところ予想していなかったし、それをここまで分かりやすく書いた本は初めてではないだろうか。
現在では自己啓発や精神性を扱う実に様々な本が出ているが、この本をベースにして考えてみると色々な点が整理されてくると感じた。インテグラルな視点というのは、そうしたメタレベルでの認識をクリヤーにしてくれるものでもあることを改めて実感できた。他にも、例えば一定領域を絶対化することがもたらす盲点、あるいは一定の傾向に留まり続けることの限界についても鋭い分析が加えられており、状況というものをダイナミックに捉える視点の大切さについても教えられるところが多かった。
ウィルバーのインテグラル理論について興味がある人はもちろん、仕事上の様々な課題の解決に関心を持っている人たちにお勧めしたい内容である。