本書が一般のビジネス書と異なるのは、最初に学問的な地平からネット・コミュニティの理論化を試みている点である。分析される成功サイトの事例も、大手の検索ポータルやオンラインショップではなく、妊婦向けの『ぷれままクラブ』、同窓会サイトの『この指とまれ!』や『アイラブスクール』(韓国)、農家と消費者をつなぐ『電直』など、個人が趣味的、非営利的に始めたものが中心になっている。より純粋な形のコミュニティの原理が抽出されているといえよう。
それによると、たとえばコミュニティは「コミュニケーションがコミュニケーションを呼ぶという自己準拠的なサイクル」に支えられており、それが規範となってサイトの「居心地のよさ」や信頼感が生まれるのだという。こうした理論をもとに、サイトの「成長のマネジメント」や「成長のジレンマ」を乗り越える方策などがつぎつぎと提示されている。マーケターやサイト運営者は必見である。
最終的に本書は、競争優位が短期間で覆されるような不安定なビジネス環境において、コミュニティ・サイトへの取組みは企業の戦略やマーケティング、問題解決のイノベーションにつながるという結論に至っている。人気サイトの設計・運営の難しさはもう少し加味されるべきだが、企業の問題解決の方向がここに見えてくるかもしれない。(棚上 勉)
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しかし、「ネットコミュニティの作り方」のようなハウツー本ではありませんので、ご注意が必要です。
本書の中心的な問題意識は、不確定な要素が多分に含まれるインターネット世界において、コミュニティサイトという秩序がいかにして形成されるのか、という点である。コミュニティの特徴は、そもそも共同する意思にあるというが、これがネットにおいて生成可能なのかどうか、また生成可能だとして新しいビジネスの可能性はどこにあるのか、これらに関連するケースが中心的に紹介される。これらのテーマは、主に3つの視点、1.コミュニティサイトの現実と理論、2.マネジメントとビジネス化、3.理論的・実践的展望から章構成されるのが特徴。
しかし、本書において次のような違和感を感じた。不確定な要素がひしめき合うインターネット世界から秩序を持つコミュニティがいかに形成されるのか、という問題意識からも読み取れるように、紹介されるケースは、さまざまな視点で紹介されており、このような3つの分類にあまり意味を感じない、という感想である。さらに、後半の章では、本書で紹介されたケースを位置づける意味でコミュニティのモデルを4パターン提示し、それぞれを位置づけることを試みているが、これらは網羅性と排他性を備えてないと考えられる。上述したように、そもそも、不確定な要素が多分に含意されるインターネットの世界において、このような分類をすること自体がナンセンスなのかもしれない。そのため、単純なケース紹介に終止していると捉えられる可能性も・・・
しかし、個別のケースを見てみると優れたケース紹介は多い。特に9章の空想生活に関するケースは、消費者との協働製品開発・生産について示唆を与えてくれるものであり、今後注目すべき重要なケースではないだろうか。
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