この映画、そもそも「クライム・ムービー」ではない。「完全犯罪」の映画でもない。
それらの要素は客を引きつけるための「エサ」で、監督のスパイク・リーがやりたかったのは、「アメリカの銀行家がナチスドイツと結託して巨利を得た」という事実を大衆に広く薄く知らしめるということだろう。そして、その過程で現在のアメリカ人の人種差別についても描いている。
劇中に登場する、ウォール街の銀行家のモデルは、まさしく米屈指の金融家のロックフェラー一族だろう。それはこの一族が戦後、「罪滅ぼし」のために“慈善活動”をしてきたという設定から分かるのである。
しかし、劇中ではロックフェラーの名前は一度も出てこない。そうではなく、ナチスドイツとの関係では被害を受けた側の、欧州の銀行家一族、ロスチャイルド家の名前が登場する。さすがに、ロックフェラーとは描けなかったので、アナロジーでロスチャイルドの名前を入れたのだろう。ロスチャイルドと慈善活動は結びつかない。
ジョディ・フォスター演じる女弁護士の裏世界を仕事をしている。彼女はビンラディンの甥の身元引受人になると言う設定になっている。彼女はかつてのロックフェラー家のお抱え弁護士のジョン・フォスター・ダレスの「現代版」ではないか?あるいは、ジョン・マクロイの現代版か?
日本の映画業界はこの映画を表面的にしか受容していないだろうが、アメリカの知識人はこの映画が戦争犯罪として追及されなかった「米財界への告発」であることはすぐに分かるはずである。
ハリウッドはユダヤ人の影響が強いので、WASPの犯罪を追及できるのだろう。それでも真実がこのように公然と描かれるのは戦後60年も経ってからにならないと無理なのだろう。