米『フォーチュン』誌の記者が11年5月に雑誌に掲載した記事に
加筆したアップル研究本。ジョブズにフォーカスを当てた本が
多いなかで、本書は従来ほとんど触れられることがなかったアップル
の組織的な実態を明らかにしている。
工業デザイナーを頂点とする(最下層は営業や人事)社内の序列、
「トップ100」と呼ばれる社内選抜、問題が生じたときにジョブズ
やクックが吊るしあげる社員を明確にする、責任制度「DRI」。
社員たちは情熱を注ぎ仕事に打ち込む一方、秘密主義的で厳しい規則と、
成果を上げなくてはならない重圧に縛られ、「アップルで働くことが
楽しいという人はほとんどいない」(p64)という。
アップルはその特異なカルチャーを社外でも通そうとする。シスコは
保有していた「iphone」や「IOS」の商標権を踏みにじられた。
メディアに対する広報対応も、一部の記者をえこひいきし好意的な
記事を書かせる一方で、その他の記者は冷淡にあしらう。投資家に
対しても、軽視する態度が露わだという。
それでもアップルがこの10年あまり、奇跡的な成果を上げてきたのは、
ジョブズという”重力”がこの非常識な組織を支えてきたからだ。
ジョブズ亡きあとのアップルがどうなるか。その答えをこれほど説得力を
もって書いた本は、ほかにないだろう。