やはりタランティーノは。
そんなにお金持ちでもないのに、ハリウッドの監督としてはいち早く東北・関東大地震への義援金を申し出るなど(という噂を聞いたのだが、ネットのどこを探してもそういうニュースが出ていない。災害時にありがちのデマか?というところもタランティーノらしいと言えなくもないが)、さすがに意識の高いりっぱな監督だと思う。
この映画が揶揄しながら描いている、ナチ以上に残酷なのは米軍だ、というのは、実は、極めて正しい認識で、西部開拓時代に頭の皮を剥いでいたのはインディアンではなく実は騎兵隊だったということが50年以上もかけて誤魔化されてきたのは正にハリウッドという帝国の所為だった、ということまで、この映画は強烈な皮肉として描いて見せているわけだ。
事実、米軍は太平洋では日本軍兵士の死体から切り落とした首を鍋で煮てドクロにして記念品として祖国に持ち帰って売っていたそうだ(ウィキペディアに米軍の残虐行為ということで紹介されている)。そういうことに気をつけながら見ていると、この映画は格段に面白味が増す。本作がこれまでのタランティーノ一流の単純なパルプフィクションもの以上の作品に仕上がっていることを証明している部分だ。
但しそういう評価ができるためには、こちらの歴史認識も試されることになる。たとえば、終戦間近にどさくさに紛れて、少なからぬナチ戦犯が密かに米国政府の手引きで米国や第三国に亡命できたのも(戦後何十年もの間、イスラエルの諜報機関による徹底追跡の対象になるが)、本作が終幕で描いた通りである。
ところで、ドイツの有名女優と英国スパイ、バスターズが酒場で集まるシーンで、英国スパイがドイツの将校にスパイであることがばれてしまう決定的な理由に関しては、多くの方もおわかりになったと思うが、ドイツでは指で1、2、3と数を数えるとき、親指から先に立てる習慣があるが、このスパイはドイツ映画には詳しいくせに、それを知らなかった、というわけだ。
要するに、そういった細かい部分の雑学に類する知識が多ければ多いほど楽しめる種類の映画とも言える。