思えばアン・リー版の『ハルク』は酷かった…。ハルクの持つ「悲しさ」にスポットを当てた事は評価できるが、あまりにテンポの悪い展開と中途半端なドラマで私(当時中学生)はつい「1,000円返せ!」と激怒してしまったのを覚えている。そして、さすがにマーヴェルも作品の出来を後悔したのか、『トランスポーター』の監督ルイ・レテリエを起用して再映画化したのがこの『インクレディブル・ハルク』というわけだ。
悲しいかな、日本では『ダークナイト』の影に隠れてしまった作品であるが、どちらも鑑賞した私としては『ダークナイト』にも引けを取らない完成度だと思うし、むしろ根本的なヒーロー映画に徹したという意味ではこちらの方が秀作かもしれない。
まず、エドワード・ノートンを主役に置いたのがベストだった。『ハルク』のエリック・バナに比べると華のない気もするが、初期の原作(ハルクの肌が灰色だった頃)を知っている者としてはノートンの方が役にピッタリだと感じるのは当たり前。原作初期のブルースはサエない科学者であり、「こいつがヒーローになるのか?」と思ってしまうほどのキャラクターであり、演じるノートンに容姿や雰囲気がそっくりだからである。同じくベティ役のリヴ・タイラーも、原作の柔らかいイメージに忠実なキャスティングをしていると思った(個人的にはジェニファー・コネリーも好きなのだが)。
そして、明確なヴィラン(悪役)のいなかった前作を反省してか、「アボミネーション」というファン納得のヴィランをチョイスしたのも心憎い。ハルクと同等のパワーを持つという原作通りの設定で、一進一退の白熱したバトルを繰り広げる姿は迫力満点だ。最初、ティム・ロスを配役したと知ったときは「"海の上のピアニスト"がハルクの相手を?」とも思ったが、それは今思えば確信犯的な選択だったのかもしれない。ノートン同様、見た目が実にひ弱(!)であるロスを選んだのは「スーパーソルジャー計画」の存在を示唆するため。そう、2011年公開のマーヴェル作品『The First Avenger: Captain America』への伏線だったのである。なんとも壮大な計画だ。
最後に、より原作の持つカタルシスを前面に出したニュー・ハルク。このハルクがとにかく格好いい。『ハルク』ではエリック・バナに似せることだけを前提として作られたため、見た目重視のハルクになってしまっていたが、本作のハルクはとにかくスマートかつマッシヴで、底知れぬパワーを感じさせる素晴らしい出来映えである。繰り出すアクションの数々もハルクらしい破壊度120パーセントのいかにもアメコミ・チックなアクションばかりで胸躍る。特にラスト、原作ファンには嬉しい「ハルク・スマッシュ」が炸裂した時は感動のあまり鳥肌が立ってしまったほどだ。VFX技術の発展にはただただ驚かされる。
Blu-rayの高画質・高音質という環境では、よりハルクの存在感を感じられること間違いなしだろう。早く家庭劇場で鑑賞したい。