これまでの教科書等ではさくっと「スペイン人が南米を征服した」に毛の生えた程度の記述しかなかったインカとスペインの関係について、本書はいままでありそうでなかった斬新な視点から描き出す。しかしながらインカ一辺倒というわけではなく、できる限り中立的・客観的な視点を保とうとしている。
インカ帝国の興隆、スペイン王国の成立からいわゆるコロンブスのアメリカ大陸到達、そして征服、植民を経て大西洋をまたがる帝国に様々な人・もの・情報ネットワークが成立し、そにには様々なドラマが展開される。日本ではほとんどなじみのないことばかりだが、生き生きと一緒運命にその時その時を生きた人々の素顔が見えてくる。中南米の人々が抱える民族的・政治的問題もよく見えてくる。
本書は19世紀の中南米諸国の独立までを扱うが、われわれの中南米理解がいかに一面的と粗末なものであったか反省を迫られる。