古い小説ですし、そんなに長くもありませんが、圧倒される読後感でした。
帝政ロシアのエリート官吏が、ふとしたことで原因不明の病を得て、まだ若いのに死んでゆく。死に瀕した彼の恐怖・悩み・苦しみは、家族も誰も理解してくれない……「私は死んでゆくのに、世界は私に気づいてくれない」と叫びたくなるような、この断絶感は、帝政ロシアであろうが現代の日本であろうが何千年前であろうが変わらない。怖い小説でした。最期にちょっと救われますが、徐々に死んでゆく主人公イワンの心理描写は全編ホラーでしたよ。
怖いものを読みたい方、おすすめです。ただし、単なるホラーではありません。ガーンとした読後感がもれなく付いてきますので、そのつもりで。ソリッドな恐怖、死への畏敬、日常の安心感といったものがぐらつく瞬間に、なんと文庫本を読むだけでアクセスできます。